【私の翻訳体験談】『中国人の苦楽観』訳者の福田櫻さん――古典の引用多く、全集を購入して確認した
【日本僑報社発】日本僑報社の最新刊『中国人の苦楽観―その理想と処世術』(李振鋼著)の訳者で、日中翻訳学院の福田櫻さんより、本書の翻訳を終えての体験談が寄せられた。
【私の翻訳体験談】『中国人の苦楽観』訳者の福田櫻さん――古典の引用多く、全集を購入して確認した
【日本僑報社発】日本僑報社の最新刊『中国人の苦楽観―その理想と処世術』(李振鋼著)の訳者で、日中翻訳学院の福田櫻さんより、本書の翻訳を終えての体験談が寄せられた。
『中国人の苦楽観』は、中国史上の名士たちの生き様と苦楽観を軸に中国文化を概観する。中国人とのコミュニケーションのヒントを得られる実用的な教養書。
訳者の福田さんは、2019年8月より日中翻訳学院で学びはじめた。本書が単行本の訳書としては第一作となる。
原書は古典の引用が多く、翻訳のために全集を購入したり、関係書籍を入手したりして確認に当たったとその苦労を述べている。
家族のサポートを得ながら、翻訳では試行錯誤を重ね、1年3カ月という時間をかけて丁寧に訳出した。本書は現在、全国の書店やオンライン書店で好評発売中だ。
福田さんの翻訳体験談は以下の通り。
◆『中国人の苦楽観―その理想と処世術』の翻訳を終えて――福田 櫻
私は2019年8月より日中翻訳学院で学んでいます。いつか出版翻訳にチャレンジしたいと思い、日本僑報社・日中翻訳学院の翻訳者選抜に参加。本書『中国人の苦楽観』の翻訳者の一人に選ばれ、とてもワクワクしたことを思い出します。
初めての単行本翻訳でしたし、わからないことも多く、翻訳学院に相談したり、できるだけ資料を入手して調べたりと試行錯誤を重ね、1年3カ月という時間をかけてようやくこのほど上梓することができました。本書は現在、全国の書店やオンライン書店で発売されています。
以下、本書を翻訳する中でとくに苦労したことについてご紹介します。
◇ ◇ ◇
なによりもまず古典の引用が多かったので、資料を探すことに苦労しました。本文は翻訳できても、唐詩や儒学の古文などはやはり中国文学科出身ではない私には訳すことはできませんし、仮に誤訳があった場合たくさんの方にご迷惑をおかけすることになってしまいます。そこで中国文学関係の全集を購入したり、インターネットでどの本に欲しい翻訳が載っているかなどを探し、できる限り入手しました。
またさまざまに表現されている名士たちの生き様の色合いを訳し分けることが難しかったです。同じ道家でも老子と荘子では、本文中にもあるように茶と酒のような違いがあります。老子は老獪な印象を受けますが、荘子はユーモラスです。李白は豪放に感じますが、その中に悲哀もあり、王国維は静かな生の拒絶によって永遠の生を選びます。著者の先生はそれらの色合いを見事に書き分けてらっしゃるのですが、それを日本語に訳すのに苦労しました。
それと関連して、名士たち各々の苦悩を表現する言葉が、辞書に載っている言葉では適切とは限らないという問題にもたびたびぶつかりました。しかし著者の先生の文章を意訳するというのは、なかなかに大それたことではないか、とも私には感じられました。著者の先生は長年研究をされて、この本をお書きになったと思います。それをどこまでおっしゃりたいことを汲み取れるか、訳しきれるか、ということがプレッシャーでもありました。どれだけ原書に忠実に意訳できるか、という点もかなり頭を悩ませたことの一つです。
また金聖嘆の「愉快なことではないか」という30近くの、愉快を感じる瞬間を述べた文章は古典というほど古くもないですが、語調が難しく、意味を理解するのが難しかったので、まずはこの文章の現代中国語訳を探しました。
やはり古典の中国語を訳す能力があるとないとでは、日本語訳の幅に差が出てくると痛感しました。今後古典も書き下し文を自分で作れるようになることが目下の目標です。
今回中国人の苦楽観を翻訳するという機会を頂き、自分自身とても幸運だったと思います。日本僑報社・日中翻訳学院の方々にご指導いただきまして、お礼申し上げます。
■『中国人の苦楽観―その理想と処世術』
李振鋼著、日中翻訳学院監訳、福田櫻(日中翻訳学院)ほか訳
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企業情報
企業名 | 日本僑報社 |
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代表者名 | 段躍中 |
業種 | 新聞・出版・放送 |
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