日中両国関係改善における出版界の課題を第五回日中出版界友好交流会で討論

9月23日に都内で開催された第五回日中出版界友好交流会パネルディスカッションにで、参加された日中出版関係者が下記の報告がありました。

日中両国関係改善における出版界の課題について、第五回日中出版界友好交流会で討論

9月23日に都内で開催された第五回日中出版界友好交流会パネルディスカッションにで、参加された日中出版関係者が下記の報告がありました。

◆パネルディスカッション「両国関係改善における出版界の課題」

王昕朋氏(中国国務院所属出版社・中国言實出版社社長)

「言實(言実)出版社」は名前の通り、「本当のことを言う出版社」という意味だ。

今回初めて東京国際ブックフェア、出版界友好交流会に出席した。ブックフェアではさまざまな本が出版されていることに啓発された。

宮本先生の講演の感想については、やはり「出版交流の重要性」という点が挙げられる。

東京ブックフェアに向けて200点の書籍を持ってきた。最も人気があったのは、中国の歴史に関する本だ。宮本先生も言われていたが、テーマ選び、内容が重要だ。いつの時代も「本は内容が命」。これからもこれを重視して出版事業を行っていく。

翻訳の質についても触れておられたが、これについても私たちが大切にしたい点だ。

読者と著者のつながりも大切。「読者こそ出版事業の神様」とよく言われる。東京ブックフェアでは中国の作家(の参加)が非常に少ないと感じた。フランスやアメリカでブックフェアに参加した時は、中国の作家が多かった。これから日本の読者を集めて討論するなど集まる場を作ることが大切。今回、ブックフェア、交流会に出られたことは光栄だ。これを機に、中国と日本の交流をさらに深めていきたい。

●袁麗娟氏(山東人民出版社副編集長)

前回は2007年に来日した。各国の出版事業の変化は激しいが、中国の出版事業の将来を見据えると、大変有意義なチャンスだと思っている。

現在、中国国内の出版社においても大きな改革があり、日進月歩で進んでいる。一番大きな権利は版権だ。私たちは2007年に初めて独自の出版権を持ち、出版した。(中国でも人気の日本人グラフィックデザイナー)原研哉に関して、そのデザインやライフスタイルを紹介するという内容だ。

日本の書籍200点余りを輸入したいと考えている。デザイン、建築、ライフスタイル(断捨離など整理整頓)に関するもので、日本の出版社であるSBクリエイティブやNHK出版などと業務提携を結ぶことができた。

この10年、私たちは多くの版権(刊行物)を持つようになり、中日交流はその重要なプラットフォームになっている。東京国際ブックフェアでは、いろいろな国のトレンドや出版技術などを見て、大変勉強になっている。「ネット技術を使って電子書籍を作る」という(新しい)方法も興味深く思った。

展示会という大きなプラットフォームを通して、日中の出版社には共通点があると感じた。日本の出版関係者ともたくさん交流したが、カタコトの英語や本の写真を使って楽しく交流できた。出版業界は「本の内容が命」という話もあったが、出版のルートも大切だと思う。ブックフェアを通して、出版理念に関する考え方、今までの常識を覆すような考え方が得られた。これから中日出版界に対しては、大きなプラットフォームを利用して、新たな出版の形を提案したり、両国の文化交流を促進したり、さらに知識の伝達のために貢献したい。

●石川好氏(作家、『湖南省と日本の交流素描』著者)

日本僑報社は、この創立20年間に300冊以上、中国を紹介する本を出版された。よくこれほど売れない本を出したと敬服している。

日本に来ている中国人学者の博士論文、修士論文をまとめたような、日本の読者が手にしないような論文も本にしている。中国都市部における中年期男女の夫婦関係を研究した本もある。学術を超えるような本も出している。これほど大量に、短期間に、本を出した会社は段躍中さんのところしかないと思う。

本は返品されるものではなく、売り切るもの。しかし、段さんの会社では返品されるものが多い。奥さんがすばらしいのだと思う。敬意を表したい。

文化交流で最も重要なのは翻訳だ。「外国人と交流したければ、英語を覚えなさい」という言葉がある。「世界の文学、思想を学びたいのであれば、日本語を学びなさい」という言葉もある。実は日本語が世界で最も思想書を翻訳している言語だからで、その数は英語よりも多い。例えば、中国の古典のほとんどが訳されている。イスラム教に関するものも。それだけでなくノーベル文学賞を受賞した作家の作品は、日本でいち早く翻訳されている。日本は世界最大の翻訳大国だろう。西洋の本が、まずは日本語を通して世界に広がっているということを知られていないことが多い。「philosophy」は日本で「哲学」と訳されて、中国に伝わっている。翻訳を通して、お互いの国が抱えているものを公開することで、日中関係が発展すると思っている。

●南晋三氏(潮出版社代表取締役社長)

50年前に『水滸伝』の漫画を出版した。45年前に『三国志』の漫画を出版。2つとも、今もよく売れ続けている。こうしたことを通じて、日本の中国学の先生ともつながりが広がり、5年前に早稲田大学(文学学術院)の稲畑耕一郎教授から話があった。北京大学から『中華文明史』という清代までの歴史書が出て、英語版はケンブリッジ大学で4年前に出たという。日本語版の話があり、全166万字という大著なので日本の出版社が引き受けるとは思わなかったようだが、当方も創業55周年事業を考えており、二つ返事でOKを出した。

しかし、その年の秋に尖閣問題が発生して、(日中関係は)戦後最悪の状況になった。だが、私の決意は揺るがなかった。日本はこれまでどれだけ(中国から)恩恵を受けているか。稲作、漢字、食べ物、料理、思想、宗教、哲学など多くの恩恵を受けている。10年の日本と中国の政治的な衝突は、2000年の歴史では一瞬のことだと思っている。知ることが相互理解を深める第一歩になる。中国の文明を改めて学ぶことでさらに理解が深まる、日中友好交流の礎になると決意した。

その後、『中華文明史』は『北京大学版 中国の文明』として全8巻を隔月で出版した。来月10月15日には北京大学で出版のお祝い会がある。毎年中国を訪れているが、交流が深まっていると感じている。文化交流、民間交流こそが大切だと思い、『中国の文明』をはじめ『知日』『在日本』といった中国を理解する刊行物の刊行に努めている。

●三潴正道氏(翻訳家、麗澤大学特任教授)

企業の人たちと話すと、中国の一面だけを見て論じている。「人民日報」は共産党の機関紙だが、いろいろな文章が載っている。コラムだけでもたくさんある。

中国のアフリカへの援助に対して、日本ではネガティブな報道が多い。

アニメの本家は中国であり、手塚治虫もそこから勉強したということもある。

出版をやっていくうえでは翻訳者が大切だが、これが非常にお寒い状況だ。文学的なものはセンスがあるが、現代書面語が弱い。日本の大学院も中国の大学院も翻訳は文学しか教えていない。日本企業の中国の裁判所に持ち込まれる争いの10%は、翻訳の誤りが原因だ。人材が不足している。出版界と協力しながら育てていきたい。



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企業名 日本僑報社
代表者名 段躍中
業種 新聞・出版・放送

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