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特ダネ取れない記者…「ニュースって何だ?」突き詰め作った新サイト

2014年7月よりスタートした朝日新聞社の「withnews」は、読者からのリクエストをきっかけに記者が深堀り取材。「みんなで一緒につくっていく」という新しいコンセプトのニュースサイトです。「プロの記者が本気でニュースサイトを作ったらこうなる」と質の高さも話題に。立ち上げに携わった「withnews」編集部の奥山晶二郎さんとは、どんな人物なのでしょうか。

変な人が好きでした


Q奥山さんが新聞記者になろうと思ったきっかけは?


okuyama01大学時代、新聞部に所属していました。文系で活気があるサークルに入りたいなと思って探していたところ、新聞部が一番元気だったんです。先輩たちは、女子高生の制服マニアだったり、城跡に行って自分の陣を思い描くような戦国マニアだったり、ギャンブル狂いだったりで面白いなと。変な人好きなんですよ、僕(笑)。

北海道の釧路で生まれて、高校生まで、ちょっと車を走らせると牛ばかりの風景が続く場所にいました。出会いも少なかったので、突然変異のようなキャラクターの人たちが揃っている新聞部は魅力的でした。

中でも一番変人だった先輩が新聞社に入社したので、自分も新聞社を受けて。一社目の朝日新聞に採用されたのが、記者になったきっかけです。

 

Q新聞部時代にはどんな記事を書かれていたのでしょう?


通っていた大学と同じ学校法人による、大学新設をめぐって起きた地元住民の反対運動など、大学に疑問を投げかけるような、斜に構えた記事ですね。案の定大学側から呼び出しを受けましたが、それもプレイの一環だと捉えている自分がいました。

 

Q朝日新聞の記者になってから、新聞部時代とのギャップを感じることはありましたか?


入社一カ月目の佐賀支局時代に、17才の少年によるバスジャック事件があったんです。犠牲者も一名出た大きな事件で、雑用も含めて最前線で駆り出され、一年以上かかりきりで取材していました。捜査が少年の家に入ったことを電話で報告すると、それが他の情報と組み合わさって記事になる。大学の新聞部とはちがって、自分自身が記事を書いて発信するというよりも、組織の一員として記事を書くというギャップがありました。自分はいい意味で歯車なのだなと。一方で、組織ジャーナリムがいい方向に動けば、個人ではできないこともできるなと感じました。

 

特ダネは取れない記者でした


Q支局時代を振り返ると、奥山さんはどんな記者でしたか?


okuyama03特ダネ記者ではないという自負がありました(笑)。だからこそ自分がどんな記事を書けるのかを考えましたね。

たとえば佐賀のバスジャック事件のとき。事件直後は全国から集中的に報道されますが、ひと段落したら、東京から来た記者は帰っていきます。僕のように地元にいる記者は、注目されていない時期に何を伝えるかも大切なのではないかと考えました。

被害者の親族と手紙のやり取りを続けて、節目ごとに紙面で紹介したり、加害者の少年が過ごしていた鑑別所の部屋に寝転んで、その時の少年の気持ちを考えてみる記事を書いたりしましたね。

 

Qその後、山口、福岡支局を経て、東京本社のデジタル部門へ。ご自身で希望を出されたのでしょうか?


そうですね。2007年当時、デジタル自体がまだ珍しいときでした。僕は27才。その年齢だと、ちょうど社会部など取材現場で駆け回りたいような記者が多い時期なんです。記者職で入社した人で、自分から記者職以外に希望を出すというのはほとんどないんですね。なので僕が福岡からデジタル部門に希望を出したとき、上司から「ほんとにいいの?記者に戻れなくてもいいの?」と確認を取られたりもしました(笑)。

 

新聞が読者に背を向けている気がした


Qなぜデジタル部門へいこうと思われたのでしょう?


福岡で紙面のレイアウトや見出しを考える編集センターの仕事をしていたときに、新聞を作る側と読者との距離があいている気がしたんです。たとえば選挙報道にお金も人も注ぎ込んで頑張るけれど、日付けが変わったらほとんどの当選者の名前はみんなわかる。新聞はそこからが勝負で、議席数や最後の一人を報道することにこだわるのですが、それはどこに目線が向いているのかなと。新聞紙上で届ける議席数に興味がある読者はどのくらいいるのだろうと。

00002読者の興味があるかわからない記事作りにリソースを注ぎ込むのは、言い方を変えると、読者に背を向けている部分もあるのかなという気がして。紙の読者自体は減っていたり、違う形でニュースに触れている人が増えている中、自分にできることは何だろうと考えたんですよね。

そんな時にたまたま、社内でデジタル部門への公募がありました。デジタルは、新聞を読んでいない人にもリーチできる世界だし、表現の幅も広がるのではないかなと。動画や記事を組み合わせたら何ができるんだろう、ユーザー参加みたいな企画もできそうだと、自分が感じていた新聞に対するもやもやを解消できるのではという可能性を感じて手をあげました。

 

紙とデジタルの世界観の違いを楽しんだ


Qデジタル部門に入ってからはいかがでしたか?


紙の記者だったときは、極論すれば面白い面白くないに関わらず、紙面があるから書かなければいけませんでした。デジタルでは、数字が取れない記事は出張にも難色を示される。紙だったら、昨年あったお祭りは今年もたいてい取材に行くけれど、デジタルでは昨年数字が取れてないから書かなくていいんじゃないかと判断したり、あるいは今年は動画をつけたりフォトギャラリーを作ったりと、新しく何かを考えていく感覚が必要で。紙とデジタルの世界観の違いを楽しむことができました。

動画取材も見様見真似でやってみたり、HTMLを濃密に勉強したりしていました。プログラムをなんとなくでも理解できたことで、プログラマーに発注する時に有り得ない要望を言うことがなくなったかなと思います。あの頃独学で勉強したことが「withnews」の運営に役立っていますね。

 

Q現在、様々なネットニュースがありますが、「withnews」はその中でどのようなポジションを目指していますか?


昔は事件が起きたら記者が現場にかけてつけていち早く報道していましたが、今は何か事件が起きたら、その場にいる一般の人がSNSで即座に発信してくれます。そのスピードや表現方法は、僕らではカバーできなくなっているなと。今はFACTを先に見つけることだけが報道じゃないと思っています。

withnews(ウィズニュース)  気になる話題やネタをフカボリ取材(ウニュ)一般の方のスピード感あるSNS発信とは違う、報道のプロならではの料理の方法を求められている気がするのです。ネット上で話題になっているものがあれば、当事者や関係者に記者が取材して裏を取って記事にして着地させるとかですね。バズっているものを取材して検証するなどして、報道機関として形を与えることにはそれなりに需要があるのかなと思っています。

今はニュースアプリやYahoo!ニュースでバズった記事を見に来てくれる読者がいますが、それが「withnews」の記事だと意識して読んでいるわけではないと思うんです。「withnews」を読めば、作り込んだ記事が読めるという認知をしていただけたら、それがブランディングになって、定期的に見に来てくれる人もいるかもしれない。マネタイズにも関わってくる部分だと思うのですが、報道のプロが本気でネットニュースを作ったときに、自分たちにしかないものは何かを考えていきたいですね。

 

ニュースの新しい読まれ方を見つけたい


Q多くの広報担当者の方とのお付き合いがあると思いますが、最近の広報担当者に感じることはありますか?


情報の最先端を熟知していて、挑戦的なPRを仕掛けている広報担当者の方のお話は、勉強にも刺激にもなります。かつ脅威でもあります。今まで広告を出してくれていたクライアントが、自分たちのメディアを持って、直接自分たちで発信してしまう。オウンドメディアがあれば、我々はいらないんじゃないかなとか。

それでも広告を出してもらうためにはどうしたらいいか、我々メディアしかできないことって何だろうと考えないといけないなと感じていますね。

 

Q最後に、奥山さん個人の今後の目標があれば教えてください。


ouyamama「ニュースの新しい読まれ方」を見つけたいなと思っています。たとえば今、人々がニュースを読むときの価値基準はFACTそのものではなくて、流通経路次第なところがあるなと。朝日新聞の一面でこれが大事というよりも、SNSで恋人に大事だと言われた記事の方を読みますよね。具体的な形はまだ見つけられていませんが、「ニュースをみんなで読む」という読まれ方が、これからのニュースの生き残り方としてあるのかなと思います。

特ダネも大事だけれど、そもそもニュース自体ってどういう価値をもって共有されていたのかなと考えなくては。ニュースでただFACTを伝えることにこだわっていると、クライアント以前にユーザーからそっぽを向かれてしまうかなと感じています。

 

(取材日:2015年5月21日/撮影:菅井 淳子)

奥山 晶二郎氏

媒体名
withnews
プロフィール
2000年に朝日新聞社入社 。佐賀、山口、福岡の地方勤務を経て社内公募で東京本社デジタル部門へ。2011年に現在のデジタル編集部新設に伴い異動。「withnews」立ち上げに携わる。

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