「親が幸福でない」と感じる子は 6%。下流老人は例外的存在子が望む親の寿命、平均90歳。8割超が85歳以上 生きて欲しい。【高齢の親と子の関係に関する調査】

「下流老人」が流行語になるなど、高齢期の生活に対するネガティブなイメージが広がっていますが、実際には、子から見てほとんどの高齢者は幸福であり、いわゆる「下流老人」は数パーセントの例外的なケースであると考えられます。http://oikohken.or.jp/seminar/013.pdf (リリースのURL)

高齢期のライフスタイルの充実について研究する、特定非営利活動法人「老いの工学研究所」(大阪市中央区、理事長:西澤一二)は、「高齢の親とその子の関係」に関する調査を実施し、30歳から76歳まで220名の回答を得ましたので、その結果についてお知らせ致します。

1.「親が幸福でない」と感じる人は、1割未満。

「親は、高齢者全体の中で、どれくらい幸福だと思いますか?(幸福だったと思いますか?)」という質問に対する回答は、以下のようになりました。

    かなり幸福だ 幸福なほうだ 平均的だ 余り幸福でない 全く幸福でない

自分の親 16.6% 46.4% 30.8% 4.7% 1.4%

配偶者の親 12.6% 51.0% 29.7% 6.7% 0.0%

 

親が幸福だと感じている人の割合(「かなり幸福だ」と「幸福なほうだ」の合計)は、自分の親、配偶者の親とも60%を超えました。一方、「まったく幸福でない」「あまり幸福でない」の合計は、いずれも6%台と非常に低い割合となっています。

「下流老人」が流行語になるなど、高齢期の生活に対するネガティブなイメージが広がっていますが、実際には、子から見てほとんどの高齢者は幸福であり、いわゆる「下流老人」は数パーセントの例外的なケースであると考えられます。

また現状、高齢者が十分に幸福であるとすれば、今後の高齢者関連施策に関し、どの程度の手厚さが必要か議論すべきであると考えられます。

 

2.8割超が、親の寿命85歳以上を望む。

自分・配偶者の父母に対して、それぞれ生きて欲しいと思う年齢を、「75歳」~「100歳超」の中から選んで頂いた結果は次の通りで、85歳以上の合計が8割超となりました。

75歳 80歳 85歳 90歳 95歳 100歳 100歳超 85歳以上計

自分の父 1% 15% 29% 34% 3% 9% 9% 84%

自分の母 2% 11% 27% 34% 7% 12% 8% 87%

配偶者の父 6% 12% 30% 33% 4% 7% 7% 82%

配偶者の母 4% 10% 27% 31% 8% 10% 10% 86%

親の現在の平均年齢と、親に生きて欲しい年齢の平均は、下表の通りとなっています(100歳超を105歳として計算)。 子が希望する親の寿命は約90歳で、父親にはあと15年超、母親には18年近く生きて欲しいと考えていることになります。

現在の年齢 何歳まで生きて欲しいか あと何年生きて欲しいか 参考(平均余命)

自分の父 73.9歳 89.5歳 15.6年 12.63年

自分の母 72.5歳 90.1歳 17.6年 17.25年

配偶者の父 73.2歳 88.3歳 15.1年 13.33年

配偶者の母 71.9歳 89.8歳 17.9年 18.10年

現在の年齢を平成26年の簡易生命表に当てはめた平均余命(右欄)と、「あと何年生きてほしいか」比べると、母親は平均余命程度、父親は平均余命より2~3年長くなりました。

子が「親はあと15~18年、90歳位まで生きる」と考える一方、現実は85歳超で約半数、90歳超で約7割が要介護状態になっています。従って、長寿を願うのであれば、病気・介護・死などについて親子で事前に検討しておくことが欠かせません。「今のところ元気だから」という検討の先送りは、大きなリスクであると認識する必要があります。

 

3.女性の36%、独身者の32%が、「介護離職の可能性があると思う」。

「実際に、親の介護をしている人」(親が要介護状態にある人のみ回答)と、「親が要介護状態になった場合、誰が介護をすると思うか」を聞いたところ、以下のようになりました。

 

実際に介護をしている人(A) 誰が介護をすると思うか?(B) 差(A-B)

自分 42% 49% -7%

配偶者 42% 32% 10%

親の配偶者 18% 15% 3%

兄弟姉妹 21% 42% -21%

ホームヘルパー 36% 37% -1%

介護施設の職員 61% 44% 17%

分らない 12% 7% 5%

 

想定より現実が低くなったのは、「兄弟姉妹」(-21%)と「自分」(-7%)、想定より現実が高くなったのは「介護施設の職員」(+17%)と「配偶者」(+10%)となっています。

兄弟姉妹がやってくれる、あるいは自分で介護をしようと思っていたが、実際には兄弟に頼れず、自分で介護することもかなわず、介護施設への入所に至ったり、配偶者頼みになったりしている様子が伺えます。

介護離職については、女性の36%が「あると思う」と回答。男性は14%に留まりました。結婚状況別には、既婚者のほうが介護離職の可能性が低いという結果になっています。

男 女 既婚 独身

あると思う 14% 36% 18% 32%

ないと思う 60% 34% 54% 41%

分らない 26% 30% 28% 27%

 

 

4.生活実感に乏しい男性、高齢期の不安や不便への想像が難しく。

「親の環境などで心配なこと」は、男女別に、以下のようになりました。(複数回答可)

女性は男性に比べて、「人との交流の少なさ」や「家の老朽化」など、暮らしに関する様々な点を気にかけていることが分かります。

男性が女性を上回ったのは「経済的な面」のみとなり、男性は、高齢の親の暮らしについて具体的に想像ができていないのではないかと考えられます。

 

<親の環境などで心配なこと>

男 女 差

健康状態 63% 62% 1%

人との交流が少ないこと 18% 32% -13%

経済的な面 27% 20% 7%

家の老朽化 10% 20% -10%

家の段差、周辺の坂道などが危険なこと 16% 19% -3%

万が一の際、助けてくれる人がいないこと 14% 17% -3%

近くに病院・スーパー・金融機関・役所等がなく不便なこと 11% 16% -5%

 

「親にしてあげたいと思っていること」も、全体に女性のほうが高い数値となりました。

項目別で、男性が上回ったのは「仕送りなど、経済的な援助をする」のみで、「連絡をマメにする」「身の回りの世話や介護をする」など、高齢の親に対する姿勢で、大きな男女差が見られました。

 

<親にしてあげたいと思っていること>

男 女 差

できるだけ、会う機会を作る 74% 75% -1%

連絡をマメにする 55% 75% -20%

誕生日などにプレゼントを贈る 43% 48% -6%

身の回りの世話や介護をする 9% 20% -12%

仕送りなど、経済的な援助をする 19% 9% 9%

近くに呼び寄せる 8% 11% -3%

自分の家に一緒に住む 6% 9% -3%

親の家に一緒に住む 5% 9% -4%

便利で安心な家への住み替えを支援する 8% 8% 0%

日用品や消費財などを送る 5% 9% -4%

 

 

 

5.高齢期の重要テーマについて、親子の会話が圧倒的に不足。

「親と会話をしたことがあるテーマ」は、以下の通りとなっています。

健康状態 94%

経済状況 58%

生活の不便・不安 50%

葬儀・お墓 38%

家の修繕・リフォーム 28%

重要なものの保管場所 24%

相続 22%

介護施設への入所 19%

延命措置 19%

自分たちとの同居 18%

親の住み替え 15%

要介護状態になった場合の対応 14%

死後、処分していい物(遺す物) 9%

 

健康状態(94%)や経済状況(58%)、生活の不便・不安(50%)など、現在の暮らしについての話はしているものの、死や死後のこと、要介護状態になった際のこと、住み替えやリフォームなど、長い高齢期の生き方に関わる重要な話題については、おおむね2割程度しか親子で会話をしていないことが分かります。

90歳の長寿を願う一方で、このような重要なテーマについて会話がなされていない状況は、病気や事故、介護、死などいざというときの対応に混乱が生じる原因となりかねず、互いに話しにくいテーマとはいえ、高齢の親とその子の対話の質の改善が急がれます。

 

【調査概要】

・ 調査期間:2016年6月27日~7月29日

・ 調査方法:インターネット

・ 回答者

男性 女性 計

128名 92名 220名

 



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企業情報

企業名 NPO法人「老いの工学研究所」
代表者名 川口雅裕
業種 その他サービス

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