震災後の今の不安は原発51.7%、余震49.0%〜1都5県のビジネスパーソン412人アンケート〜

労務行政研究所ジンジュール編集部では「ビジネスパーソンの東日本大震災に関するアンケート」を実施した。それによると、震災当日〜翌日にかけて帰宅した人は74%で、うち45%が帰宅手段に徒歩を含む。現在の不安は「原発事故による健康被害」「余震や再びの天災への備え」が約半数に上る−−ことなどがわかった。

■1.震災当日の状況
1-1 震災の瞬間、どこで何をしていたか
 民間調査機関の(財)労務行政研究所(理事長:矢田敏雄、東京都港区東麻布1-4-2)ジンジュール編集部では、このほど「ビジネスパーソンの東日本大震災に関するアンケート」を実施し、東日本大震災が起きた際のビジネスパーソンの行動や、その後の意識、さらに企業の災害対策について調査した。
 今回の震災が発生した3月11日14時46分にどこにいたか聞いたところ(出張や旅行で海外にいた人を除く)、屋内にいた人が84.1%、屋外にいた人、移動中だった人が15.9%との回答が得られた。
 また、今回の震災では、おおむね6割のビジネスパーソンが自分の職場にいた。職場における防災がいかに重要かが再確認される結果である。

1-2 震災当日の帰宅・宿泊状況
 震災当日(または翌日にかけて)、ビジネスパーソンにどのように行動したかを聞いたところ、23.9%の人が帰宅をせずに「泊まった」ことがわかった。
 実際に「泊まった」人に、どこに宿泊したかを聞いたところ、73.3%の人が「会社に泊まった」と回答。次に多かったのが「知り合いの家に泊まった」の15.4%となった。意外にも「外部の宿泊施設に泊まった」は5.4%にとどまり、帰宅困難な状況下で、ホテルや旅館に泊まることができる人は、ごく一部に限られることがわかった。

1-3 帰宅した場合の手段
 震災当日(翌日以降も含め)に帰宅したビジネスパーソン223人に、その手段を尋ねたところ、37.7%が徒歩のみで帰宅、次いで22.9%が自動車を使ったことがわかった。
 次に多かったのが自転車の13.9%。また、バスや電車などの公共交通機関で帰った人は、13.5%だった。都内のバスは震災直後も比較的運行していたが、それでも公共交通機関だけで帰宅できた人は、7〜8人に1人といった結果となった。
 ちなみに、「徒歩と自動車」「徒歩と公共交通機関」など、帰宅に際して徒歩を含んだ人は45.3%に上った。ほぼ2人に1人は、自宅を目指して自らの足で歩くのを選択したことがわかる。
 なお、タクシーだけで帰宅できた人は、わずか2.7%。特に都内では、震災によって道路が著しく渋滞していたため、タクシーがまったく捕まらない事態となっていたようだ。

1-4 今回の震災を通しての教訓
 「今回の大地震の経験を通して、教訓として学んだこと、今後に活かしていきたいこと」を聞いたところ、412人中398人から意見が寄せられた。そこから見えてきたのが「気持ち」「備え」「情報」の3つのキーワードである(添付資料参照)。

■2.震災後の行動、不安について
2-1 被災地への支援や震災後の行動
 被災地への支援として協力したこと(したいと思っていること)、震災後に行ってきたことを聞いたところ(複数回答)、「募金、義援金への協力」が最も多く、79.6%とほぼ8割にも達した。また、これに続く「節電への協力」も72.1%となっており、これらの行動を取っているビジネスパーソンは非常に多いことがわかる。
 以下、「不必要な通信、交通移動を控える」(30.3%)、「食料、衣類など救援物資の提供」(19.9%)、「献血への協力」(10.4%)と続く。一方で、「災害地に赴いたボランティア活動」はわずか1.9%にとどまった。このことから、1都5県を中心としたビジネスパーソンにとって、働きながらでも行える支援活動が現時点では大勢を占めていることがわかった。

2-2 震災後、現在の状況で特に不安に感じていること
 震災後、現在の状況で特に不安に感じていることを聞いたところ(3つまでの複数回答)、「原発事故の影響による自分や家族の健康被害」が51.7%、「余震や再びの天災にどう備えるか」が49.0%となり、これら2つの選択肢に多くの回答が集中した。4月12日現在、事故の深刻度を示す国際評価尺度で「レベル7に相当する」と発表された福島第一原発事故。今もなお、国内のみならず、世界的に注目を集めているが、やはり首都圏に住むビジネスパーソンの不安感は非常に大きいようだ。
 また、震災の企業活動への影響を危惧する意見も挙がっており、「自粛ムードに伴う営業の落ち込み」(24.0%)、「生産活動、営業活動が当面落ち込む見込みであること」(19.9%)、「計画停電により、事業運営が困難となっていること」(17.0%)などとなっている。なかには「事業縮小に伴う雇用調整、解雇」(13.8%)といった、ビジネスパーソンならではの不安もみられた。

■3.震災に関連した会社の対応
3-1 今回の震災に対する会社の備え
 ビジネスパーソン412人に今回の震災に対する会社の備えを評価してもらったところ、「十分」と回答した人はわずか2.7%にとどまった。最も回答が多かったのが「やや足りない」(42.7%)で、以下、「まったく足りない」(29.4%)、「ほぼ十分」(25.2%)の順となっている。
 「やや足りない」と「まったく足りない」を合わせると72.1%に上り、約4人に3人のビジネスパーソンが、会社の地震に対する備えが不十分と認識していることがわかった。

3-2 具体的な地震対策の状況
 安否確認、転倒防止・落下防止、地震対策マニュアル、水や食料などの備蓄についてのビジネスパーソンからみた自社の対応状況を聞いたところ、「今回の震災の前から対応(整備)していた」割合が高い順では、「安否確認方法の整備」35.7%、「水や食料などの備蓄」33.7%、「地震対策マニュアル」27.2%「転倒・落下防止対策」24.3%となっている。
 一方、「対応(整備)していない」割合を高い順にみると、「転倒・落下防止対策」41.7%「水や食料などの備蓄」37.1%、「地震対策マニュアル」29.9%、「安否確認方法の整備」28.9%となった。
 なお、各項目とも「わからない」という回答が2〜3割台を占めており、従業員に対応自体が認識されていないことがうかがえる結果となった。

3-3 計画停電に伴う会社の対応
 東日本大震災に伴い東京電力の発電所が被災したことで、発電量が電力需要を下回るのを回避するために、地域ごとに順番に電気を止める計画停電が実施された。計画停電によって電気の供給がストップすると事業が続行できなくなる会社は少なくない。
 そこで、計画停電に対応するため会社が行った労働時間の対応(複数回答)を聞いてみたところ、「特にない」が41.3%でトップとなった。以下、「計画停電に応じて、勤務時間を短縮した」(26.0%)、「通勤困難者を自宅待機とした」(22.3%)の順となっている。「事業所全体を休業とした」は6.1%だった。

3-4 大地震の経験を踏まえ、会社に要望したいこと
 今回の震災の経験を踏まえ、会社に要望したいこと、実現してほしい施策を自由記入で挙げてもらい、その中から多く挙げられたキーワードを抽出したところ、最も多く挙げられたのは、「災害時の対策・安全確認マニュアルや、防災・危機管理計画を作成、整備してほしい」といった、非常時用マニュアルの作成だった(37件)。
 以下、「災害時に向け食料や水を備蓄してほしい」「ヘルメットや毛布など、防災用品を人数分支給してほしい」など、有事に備えた物品の備蓄について(31件)、 「オフィス家具やキャビネットなどの転倒防止策を講じてほしい」「ソーラーパネル等自家発電設備の整備を行ってほしい」 など、オフィスの補強、整備について(29件)、 「公共交通機関が止まって出勤できなくなった日の休業、自宅待機等の判断を明確にしてほしい」「遅刻・早退や時差出勤を認めてほしい」など、出勤困難への対応について(26件)、 「緊急時の連絡体制を整備しておいてほしい」「安否確認方法を明確にしてほしい」といった連絡体制について(26件)――と続いている。
 ちなみに、前出の 『3-2 具体的な地震対策の状況』では、自社が対応(整備)していない地震対策の上位に、「転倒・落下防止対策」「水や食料などの備蓄」「地震対策マニュアル」「安否確認方法の整備」が挙げられていたが、これらは今後ビジネスパーソンが会社に要望したいこととおおむね一致する結果となった。

■本プレスリリースに関するお問い合わせ
労務行政研究所 ジンジュール編集部 荻野、前田、五林
TEL:03-3584-0845 Eメール:editor@jinjour.jp
ジンジュールの概要 http://www.jinjour.jp/
労務行政研究所が編集する企業の人事担当者を対象とした人事・労務の専門情報誌『労政時報』の情報提供のノウハウをベースに、「jin-jour ジンジュール」は、“働く現場をもっと元気に!”というコンセプトの下、働くすべての人々に関心の高い、人と会社にまつわるさまざまな情報を、月曜日から金曜日まで毎日更新するWebサイト(http://www.jinjour.jp/)と、Webサイトの情報を凝縮したフリーペーパー(隔月発行、第6号は2011年5月中旬発行)で発信しています。
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企業情報

企業名 一般財団法人労務行政研究所
代表者名 猪股 宏
業種 新聞・出版・放送

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