小林製薬紅麹事件研究解説 【シリーズ】小林製薬・行政・マスコミによって隠されていること 「規制されなかった理由」と「健康被害の根本的原因」
株式会社薫製倶楽部(岡山県都窪郡早島町)は2026年5月30日、自社ウェブサイトに小林製薬紅麹事件 【シリーズ】小林製薬・行政・マスコミによって隠されていること 第8弾「規制されなかった理由」と「健康被害の根本的原因」——EUのnovel food規制と日本の規制の欠如————UV変異処理工業株による発酵物が「食品」として市販された構造的背景——を公開した。
株式会社薫製倶楽部(岡山県都窪郡早島町)は2026年5月30日、自社ウェブサイトに小林製薬紅麹事件 【シリーズ】小林製薬・行政・マスコミによって隠されていること 第8弾「規制されなかった理由」と「健康被害の根本的原因」
——EUのnovel food規制と日本の規制の欠如——
——UV変異処理工業株による発酵物が「食品」として市販された構造的背景——
を公開した。
▼対象記事URL
https://kunsei.com/archives/933
【シリーズ】小林製薬・行政・マスコミによって隠されていること 第8弾 |
「規制されなかった理由」と「健康被害の根本的原因」 |
——EUのnovel food規制と日本の規制の欠如—— ——UV変異処理工業株による発酵物が「食品」として市販された構造的背景—— |
プレスリリース 我々紅麹業界に何が起こったか 74
前号(PR73)では、紅麹コレステヘルプ(食品)が精製工程を経ないため、BP-412のUV変異による未知代謝物がそのまま消費者に届く構造であることを示した。また、食経験の存在しないUV変異代謝物が、安全性の根拠なき状態で摂取されていたことを論じた。 今号では、なぜこの製品が規制されなかったのかを問う。EUが「novel food(新規食品)」として規制する枠組みを持ちながら、日本にはそれに相当する制度が存在しなかった。この規制の欠如が、健康被害の根本的原因の一つである。 そして、小林製薬が「未知の物質が検出された」として大騒ぎして自主回収騒動を起こしたことは、このすべての構造的問題の必然的帰結であったことを示す。 |
株式会社薫製倶楽部 代表取締役・薬剤師 森 雅昭
■ ① EUのnovel food規制——「食経験のない食品」を規制する枠組み
EUは1997年に「novel food規制(Regulation (EC) No 258/97)」を制定し、2018年に改訂版(Regulation (EU) 2015/2283)を施行した。このnovel food規制の核心は、「EU内において1997年5月15日以前に相当量の消費実績がない食品または食品成分は、安全性評価を経なければ市場に流通させることができない」という原則である。
【EUのnovel food規制の対象範囲(Regulation (EU) 2015/2283 第3条)】
以下を含む食品・食品成分が規制対象となる: ・新しい製造工程から得られた食品(従来の製法と有意に異なるもの) ・微生物、真菌、藻類から得られた食品 ・意図的に遺伝子改変または変異処理された微生物から得られた食品 ・1997年以前にEU内で相当量の消費実績がないその他の食品・成分
→ UV変異処理によって作出された工業株(BP-412相当)から得られた発酵物は、 この規制においてnovel foodとして安全性評価の対象となりうる。 |
EUにおいてred yeast rice(紅麹)は、monacolinK含有量との関係でEFSA(欧州食品安全機関)による評価が繰り返され、2022年には「食品サプリメントにおいてモナコリンKをスタチンとして規制すべき」との結論に至っている。
さらに重要なのは、EUが使用する菌株の由来・変異処理の有無・代謝物プロファイルに着目した評価枠組みを持っているという点である。
■ ② 日本の規制の欠如——何が問題だったか
日本には、EUのnovel food規制に相当する制度が存在しない。食品衛生法、食品安全基本法、機能性表示食品制度のいずれも、「使用する菌株が変異処理工業株であるか否か」「その代謝物プロファイルに食経験があるか否か」を規制の判断基準としていない。
規制項目 |
EU(novel food規制) |
日本(2024年当時) |
| 食経験のない食品の規制 | あり(1997年以前の消費実績が必要) | なし(相当制度が存在しない) |
| 変異処理微生物由来食品の評価 | 対象(菌株の由来・処理の有無が評価基準) | 対象外(菌株の変異処理有無は問われない) |
| 副生成物・代謝物プロファイルの評価 | 安全性評価の一環として求められる | 求められない(精製なし食品に対する規定なし) |
| 機能性成分(モナコリンK)の規制 | 医薬品成分として規制(2022年EFSA結論) サプリメントとしての流通を事実上禁止 |
機能性表示食品として流通を許容 (「モナコリンK」は届出表示の対象外だが含有自体は規制されない) |
| 事前安全性審査の要否 | 必要(EFSAによる事前評価が必須) | 不要(機能性表示食品は届出制・事後確認) |
この規制の差異は単なる制度設計の違いではない。EUがnovel food規制を設けた背景には、「食経験のない物質が食品として流通することへの科学的懸念」があった。日本はこの懸念に対応する制度を持たなかった。
■ ③ 「機能性表示食品」制度——規制の空白を埋めなかった枠組み
紅麹コレステヘルプは、消費者庁の機能性表示食品制度に基づいて届け出られた製品であった。機能性表示食品制度(2015年施行)は、科学的根拠に基づく機能性を届け出によって表示できる制度である。しかし、この制度は「製品に含まれる全成分の安全性評価」を事業者に義務付けていない。
【機能性表示食品制度の構造的問題点(本件に関連する部分)】
・届出は「機能性の根拠」に関する書類が中心であり、使用菌株の由来・変異処理の有無は審査対象外 ・副生成物・未知代謝物のプロファイルについての提出義務はない ・「伝統的食品」と「工業変異株由来食品」を区別する基準が制度内に存在しない ・消費者庁は届出を「受理」するが、安全性についての実質的な事前審査は行わない
→ 結果として、食経験のないUV変異代謝物を含む発酵物が、国の届出制度のもとで流通することを事実上許容していた。 |
■ ④ 三重の規制の欠如——健康被害の構造的原因
以上の分析を整理すると、本件健康被害の根本的原因は、三層の規制の欠如が重なったことにある。
層 |
規制の欠如 |
帰結 |
第一層 |
Novel food規制の不在 | 食経験のない工業変異株由来食品が、安全性評価なしに流通を開始できた |
第二層 |
菌株同定・変異処理審査の不在 | BP-412がUV変異処理工業株であることが、製品流通の障壁にならなかった。行政も菌株の同定を一度も行わなかった |
第三層 |
副生成物・代謝物プロファイル評価の不在 | 精製なき発酵物に含まれる全代謝物の安全性評価が求められなかった。「未知の物質」は最初から存在していた可能性がある |
この三層の欠如は、互いに補完し合う構造になっていた。第一層(novel food規制)があれば、第二層(菌株審査)・第三層(代謝物評価)が発動するきっかけになった。しかし日本には第一層が存在しなかったため、第二層・第三層も機能する機会がなかった。
■ ⑤ 「未知の物質」騒動の構造的必然性——すべての帰結として
2024年3月に小林製薬が「未知の物質が検出された」として自主回収を開始したとき、社会はこれを「突発的な品質問題」として受け止めた。しかし、ここまでの分析が示すように、これは突発的な事故ではなく、構造的必然の帰結であった。
【「未知の物質」騒動の構造的連鎖】
① BP-412はUV変異処理(生存率0.5%)により作出された工業株であり、 意図した形質以外にゲノム全体に無数の変異が蓄積していた(PR71参照) ↓ ② 発酵物は精製されず、UV変異由来の代謝物を含む全成分がそのまま製品となった(PR73参照) ↓ ③ 日本にはnovel food規制が存在せず、この製品の流通を事前に規制する仕組みがなかった(本号) ↓ ④ 食経験のない代謝物を含む製品が、機能性表示食品として国の届出制度のもとで流通した ↓ ⑤ 健康被害が発生した後に初めて「未知の物質」が発見された ↓ ⑥ 小林製薬・行政は「原因物質の特定」に注力したが、根本的原因(①〜③)には向き合わなかった |
【本件の本質的問題点】
小林製薬の「未知の物質」発表と自主回収騒動は、①〜④の構造的問題が顕在化したに過ぎない。 行政がその後「プベルル酸が原因物質」と定め、後にそれを否定した混乱(PR65〜PR67参照)も、 根本的原因(三層の規制の欠如)に向き合わなかったことから生じた。
本来問われるべきは: 「なぜ食経験のない工業変異株由来の未精製発酵物が、安全性評価なしに食品として流通できたのか」
この問いは、現在も行政によって正面から答えられていない。 |
【本号のまとめ】
・EUのnovel food規制は、1997年以前に消費実績のない食品(UV変異処理株由来食品を含む)を事前安全性評価の対象とする。日本にはこれに相当する制度がない ・EUは2022年に紅麹のモナコリンKをスタチンとして規制し、サプリメントとしての流通を事実上禁止した。日本の機能性表示食品制度にはこの観点が存在しなかった ・novel food規制の不在・菌株同定審査の不在・副生成物評価の不在という「三層の規制の欠如」が重なり、健康被害の構造的条件を形成した ・「未知の物質」騒動は突発的な品質事故ではなく、この三層の欠如が最終的に顕在化した構造的必然であった ・行政は今もこの根本的問いに正面から答えていない
→ 続く(PR75以降):行政の「収去なき断定」と菌株同定の不作為——これをどう法的に評価するか |
株式会社薫製倶楽部 代表取締役・薬剤師 森 雅昭 〒701-0303 岡山県都窪郡早島町前潟611-1 TEL:090-2001-0686 Email:sales@kunsei.co.jp |
【過去のプレスリリース】
・自社サイト(紅麹関連記事一覧):https://kunsei.com/archives/category/benikoji
・ValuePress(薫製倶楽部 配信一覧):https://www.value-press.com/corporation/87091
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企業情報
| 企業名 | 株式会社薫製倶楽部 |
|---|---|
| 代表者名 | 森雅昭 |
| 業種 | 食品関連 |
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