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インバウンド対応で再確認したミッション

外国人観光客の増加にともない、多言語メニューやWi-Fi環境の整備といった体制づくりとともに、集客のためのPR施策が注目されています。今回は日本を代表する小売業グループ、三越伊勢丹ホールディングスのインバウンド推進、瓦林恭子さんに外国人顧客政策の要諦を伺いました。

四季に育まれた日本の五感。ものづくり、品そろえ、もてなしに生かす




Q御社のインバウンド推進チームはどのような経緯で設立されたのでしょうか?


背景としては、店全体の売上に占める免税売上のシェアが5%を超える店舗が現れてきたことが挙げられます。
弊社では伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店の3店舗を首都圏の基幹店舗と言っています。この基幹店舗の中でまず最初に三越銀座店が、次に伊勢丹新宿本店が5%を超えました。そこで「専任の部署を作ろう」と、13年度中に構築プランを立てて、14年度から専任部署を作りました。現在は三越銀座店の約25%、伊勢丹新宿本店の約10%を免税売上で占めています。


Q外国人顧客政策ではどのような点に力を入れているのでしょうか?


大事にしていることは4つあります。まずはデータです。
やみくもに宣伝物を作ったり媒体に掲載したりしても効果を得ることはできません。日本人向けのマーケティングプランを立てるのと同じように、対象顧客を知り、誰に対し、いつどこで、何を打ち出すのかを、実態を踏まえて考えていかなければなりません。

2つ目は、どういうふうに伝えていくか。
かつて私が伊勢丹の広報担当をしていた1996年に、新宿に高島屋さんがオープンしました。
大規模な店舗が出店するということで、ややもすると新店だけが注目されてしまう可能性もありました。しかし同時期に行った伊勢丹新宿本店のリモデルについても、街の活性化という方向性で積極的に情報発信を続けた結果、マスコミのみなさまに地域全体のこととして報道していただき、伊勢丹新宿店もリモデル効果を最大限に発揮できたのです。
いくら良い取り組みや商品があっても、お客さまに伝わらなくては意味がありません。ですからどうやって伝えていくかを2つ目の大きな柱にしています。


Qデータと伝え方はどちらも大事ですね。百貨店の現場で力を入れているポイントはありますか?


私どもは小売業ですから、ご来店されるお客さまにご満足いただけるように品揃えをすることをモットーとしています。しかし当社では、日本人のお客さまと外国人のお客さまとで品揃えを変えることはしません。外国人向けに商品を用意するのではなく、同じように楽しんでいただくことを考えています。

2015年1月に企業メッセージ「 this is japan.」を国内外に向けて発信しました。

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「日本の良さってどこにあるんだろう、私たちのミッションって何だろう」と考えたときに、日本の四季に育まれ、研ぎ澄まされた五感。その五感をはたらかせたものづくり、品ぞろえ、もてなしを行うという、その感性の使い方こそが、私たちの一番得意なことだと気付いたのです。
これは外国人に対しても日本人に対しても同じこと。ですので商品を分けるということではないと思っています。
ただし伝え方自体は、伝えたいことが正しく伝わるように、動画でもインターネットでも変えていかなければなりません。


百貨店に「さん」がつく、日本独特の百貨店文化




Q外国人と日本人とでは、伝え方が違うということでしょうか?


たとえば同じ伝統工芸品に接しても、日本の方だったらその価値がわかりますが、海外の方はそれがどういったものなのかわからない場合も多いのではないでしょうか。物だけ見せて「良いでしょ」と言っても、「どういうふうに使うの?何が良い所なの?これとこれの何が違うの?」とわからないことだらけなのです。
ご説明をする場合にも、海外からの目線に合わせる工夫が必要です。
これは3番目の重点ポイントである、店内の多言語表示や通訳といった受入れ体制の整備にも言えることです。サービスを押し付けるのではなく、海外からお越しのお客さまの目線で本当に必要なインフラを整えたいと考えています。
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最後の4つ目が、地域や行政との連携です。
海外の旅行博に行くと、国内とは違い、三越伊勢丹グループをご存知の方はまだまだ少ないということに気が付きます。
国によっても認知度が異なるわけです。たとえば私どもの店舗がある国では知られていても、そうでない国ではほとんど知られていない。だからこそ単独でPRするだけでなく、行政や他企業と連携し、地域としてPRしていけるよう努めています。

日本の中にいると、どうしても三越や伊勢丹は知られていると思い込んでしまいます。ところが海外に出てみると違います。
知られていないのであれば、ひとつの店舗ではディスティネーション(観光の目的地)にはなれませんので、エリアに来てもらう工夫が必要なのです。
新宿であれば、「都庁も新宿御苑も花園神社もある。ビックロやドンキホーテやマツモトキヨシもある。楽しい街ですよ。」と紹介することも、海外のお客さまに対しては重要だと感じています。
もちろんファッションにものすごく関心の高い方は伊勢丹新宿本店を目掛けてきてくださるのですが、多くの方はそうではありません。ですので、その地域の中で連携を図ってプロモーションを行っています。

また「百貨店ってどういう所なんだろう」ということを伝えることも大切です。これは日本における百貨店の文化が独特だからです。
「伊勢丹さん、三越さん」とか、海外では「さん」付けまでされて親しまれる百貨店はそんなにないと思います。日本の百貨店のどこが面白いのか、楽しいのか、わくわくするのかを、私たちがちゃんと伝えていかなくてはいけないと思っています。


Q日本の百貨店の良さは、外国人の方にはどのように伝わっているのでしょうか?


ヒントはいろいろな所にあります。たとえばトリップアドバイザーの書き込みを見るようにしているのですが、SNSの書き込みでどういうふうに評価されているのかを確認することができます。
書き込み内容で特に多いのが地下の食料品売場です。フードホールについてのわくわく感、ここに1日中でもいたいとか、すごくおいしいものがあってアミューズメントパークみたいとか、そういうふうに感じてくださっているのを知ると、本当に嬉しくなります。
あと手前味噌になってしまいますけれども、どこのフロアに行っても気持ちのいい応対をしてくれると、サービスを評価してくれる声もあります。
一方で、ファッション関連の商品は高くて手が出ないといったご意見も書き込まれており、お客さまの肌感覚がわかります。今の時代はそうやって反応を聞き取ることもできるので、大変勉強になります。


為替や法改正に負けない基盤を作る




Q外国の方から見た百貨店を知る、ということからですね。


そうですね。さらに店頭の生の声も重要です。
以前は、中国などアジアのお客さまはリストで持ってきて「これください」という方が多かったのですが、最近はお買い物の際に詳しい説明を求めていらっしゃいます。また「これの成分は何ですか?原産国はどこですか?」と商品の詳細を聞かれることが多くなっているようです。
靴のシューフィッターや化粧品の美容コンサルティングはもちろんのこと、自分に合った枕を探しに来られたりすることもあります。
アジアのお客さまも変化しているのです。そういった変化は、売れたものだけを見ていたのではわかりませんので、店頭のスタイリスト(販売担当者)やセールスマネージャーに、お客さまの変化を教えてもらうようにしています。


Q確かにそういった変化は購買データからだけではわからないですよね。


定量的な購買データは今までも取ってきました。これに加えて、お客さまの変化や最近の動きといった定性的な情報を知ることによって、免税売上の減少を食い止められる可能性があると思うのです。今だいたい免税の売上って、8掛けから7掛けのところを行ったり来たりするわけです。ただ免税売上が前年比80%であっても、免税客数は110%で伸びている。つまりお買物への期待は一定レベルで継続しているものの、お買い上げの単価が落ちているわけですね。
免税顧客一人当たりの購入金額の減少には、為替変動や中国の持込関税の引き上げが大きく影響していると言えますが、一番重要なのはその買い方の変化、お客さまの買い物に対してのお気持ちの変化なのです。変化の兆しを見つけて、素早くその状況に合わせたご提案をしていく。為替や他の国の法律はさまざまに変化しますが、それに負けないというか、それで右往左往しない基盤を作ることが大切だと思います。そこにはやはりマーケティングデータが重要です。定量と定性の両方の情報を使っていくということだと思います。

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総額だけでなくシェアも見る。見方を変えるとわかること




Qデータと生の声をどのように活用しているのか、具体的にお話を伺えればと思います。


たとえば伊勢丹新宿本店の本館の6階にあるベビー子供用品のコーナーについて一例としてお話しします。一般的に免税売上については、みなさんよく「何が一番売れていますか?」とお聞きになります。そうするとどうしても、「化粧品とブランドバッグ、あとジャパンブランドのファッションです」となるわけです。
ところがもうちょっと切り口を変えてみて、「日本人の売上に対して外国人の比率が高いものは何ですか?」となると、ベビー子供用品の比率が高い。
日本が少子化の中で海外、特に日本の少子化が進む一方で、アジアは子どもが増えています。中国では一人っ子政策が徐々に緩和されてきているものの、一人のお子さまにかける金額が大変多くなってきています。最初のお買い物の対象はママのブランドバッグだったかもしれないですが、徐々に子どものものやリビング関連商品になってきているのです。

こういったことは売上金額だけを見ていたのではわからないですよね。そこはシェアも見るし、「何でそれなの?何で売れているの?」ということを店頭に聞いて参考にします。実際に聞いてみると、すごく機能に優れて安心だったり安全だったりと、アジアから来る方たちの関心に合致しているという話になっているわけですね。


三越伊勢丹グループらしさとは




Q三越伊勢丹グループらしさはどのように打ち出しているのでしょうか?


どこの百貨店もおじぎはきれいだし、ラッピングもきれいだし、日本の良いものを売っている中で、いかにして三越伊勢丹グループの店舗をお選びいただくか。それは私たちの大きな課題です。

日本の方だったら三越といえばこう、伊勢丹といえばこうというイメージが湧きます。でもそれを、もう少し言葉やビジュアルにして伝えていかない限り、海外の方には通用しません。
今、アジアから訪日されるみなさまは、中国しかり、インドもベトナムもシンガポールだって、競争の厳しい社会で生きてらっしゃいます。だから旅行の最中も、刺激を与えてくれる場所であると同時に、どこかほっとする場所があったらいいなと感じるのは、日本人だけではないと思います。
たとえば屋上の緑に囲まれた空間や、夏に行っているビアガーデン、レストランのテラス席など、空間を楽しめる場所をもっとアピールした方が良いのではないかという意見が我々のチームのメンバーからも出ています。
単にお買物をする場所ということではなく、旅行の最中も心地よくなれる場所として、私どもの百貨店を思い出していただければ嬉しいです。


Q三越伊勢丹の強みを挙げるとしたら、どういうところなのでしょうか?


感性の豊かな、良いお客さまがご来店くださってるというのが、一番の財産ですね。
そして立地も強みです。とくにインバウンドについては、店がどこにあるかで全く違います。弊社の場合には、新宿と日本橋と銀座の3つの街に基幹店があることは大変な強みです。

そしてお取組先の協力に支えられた圧倒的な品揃えとサービスが、私どものもう一つの強みです。これも良いお客さまがいるからこそ、お取引先が協力をしてくださるのだと思います。


Qヒト、場所、モノが揃っていることは強みですね。


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もうひとつ加えると、お客さまのことを考える気持ちが強いことも、三越伊勢丹グループの特徴です。
それは、お一人お一人のお客さまに寄り添うことでもありますし、お客さまのタイプごとに提案をさせていただくということもあります。様々な形でお客さまのことを考え、向き合うという姿勢が私どもらしさだと言えるでしょう。

今社内では、「免税売上の上がり下がりに一喜一憂するな」と言われています。ベースの部分をきちんと作ることが優先だからです。どういうお客さまが何を求めていて、どうしていくとファンになってくれるのかということを、ちゃんと見ていこうという方向性です。
ですので変に値引きをしてでも売る、ということはしません。日本人のお客さまにしていないことを外国の方にして、急場しのぎで対応するということはありません。お客さまにとってそれが良いはずがないという考えだからです。値引きでお客さまを呼ぶことは、もしかしたら知ってもらう、来てもらうという点では有効なのかもしれません。でも中に入ったとたんに、私たちの買うべき所ではないとか、買えるものがないとか、無理やり買うみたいな話になってしまっては、もう二度と来ないということにつながりかねません。
ですのでそうした方法でお客さまをお呼びすることは、当社グループでは行っていないのです。


集客からファン化へ。今後の取り組み




Q最後に今後の取り組みについて伺いたいと思います。


大きく2つあります。ひとつはお客さまの固定化です。ここ数年は、急激に海外からのお客さまが増え、その対応に私どもも追われてしまっていました。これからはご来店いただいたお客さまに、もっと積極的に情報を発信し、一層深い間柄になって行かねばならないと思っています。

もうひとつは海外との連携です。海外店舗との連携はもちろんですが、行政の力を借りたり、他の企業の力を借りるなどしてスピーディーに進めたいと思っています。将来的には越境ECなどで24時間海外とつながれる形を作れれば良いと思います。


Qそういえば先日、新聞で人工知能を使った利き酒の記事を拝見しました。


「新宿の利き酒の所で人工知能を使って好みのお酒をレコメンドします」ということをテストトライとしてスタートしています。こういった新しい仕組みを、海外からのお客さまにも利用していただけるようにするのも我々のミッションです。

ただそうした新しい技術を使う場合、業務フローの変更が生じます。だいたい新しい技術というのはパーフェクトなものはないですから、使いながら育成していくことになります。たとえばテレビ電話通訳もすごく素晴らしい技術で、私どもも活用させていただいたのですが、建物の構造や接客の内容によっては、スムーズに使いこなせない場合もあります。そういったことも気に留めながら、技術を最大限活用して、効率的に運営できるようにしていくのも大切なことと捉えています。

 

(取材日:2016年8月18日/撮影:首藤 達広)

瓦林 恭子 氏

企業名
株式会社三越伊勢丹ホールディングス
部署・役職
営業本部 マーケティング戦略部 顧客政策担当 インバウンド推進
設立
2008年4月
所在地
東京都新宿区新宿五丁目16番10号
URL
http://www.imhds.co.jp/
プロフィール
1992年株式会社伊勢丹(現 株式会社三越伊勢丹)入社。
広報担当、伊勢丹新宿本店 婦人服部門のセールスマネージャー、バイヤーなどを経て、2009年から顧客政策を担当。
2015年4月から現職。

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