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女性たちの共感を呼び、世の中を動かす仕掛人

ル・クルーゼにダウニー、食べるラー油や塩麹…数々のブームを起こしてきた雑誌『Mart』。仕掛け人は04年の創刊から編集長を務める大給近憲氏。女性たちの共感を呼び、世の中を動かすブームを生みだす大給氏にお話を伺いました。

Qまずは大給さんが編集者になられたきっかけ・動機について教えてください。


私が学生だった80年代前半は、バブル前夜と言われている時代でした。広告業界は非常に華やかで、「パブリックリレーションズ」という概念が浸透してきた頃でもありました。大学三年生の時、大手広告代理店でインターンをやる中で、PRにおいて大きな役割を占めているマーケティングに興味を持ちました。コピーを書いたりコマーシャルを作るのも面白いけれど、世の中を動かしている「仕掛け人」としての面白さに目覚めたのはその時でした。

就職は、出版社かPR会社かで迷っていました。PR会社から出版社へは移りにくいけれど、逆はあるんじゃないかとアドバイスを受け、文学部ということもあり光文社に入社しましたが、自分に雑誌作りの適正があるとは思っていませんでした。けれど配属されたのは、なぜか雑誌の創刊、しかも女性誌である『CLASSY.』だったのです。

 

Q女性誌を担当することについて、抵抗はなかったのですか?


もう不安しかありませんでした(笑)。
立教大学に通っていた頃は、ちょうどハマトラ・ニュートラの全盛期。周りの女子大生たちは皆『JJ』を読んでいました。男友達の家に行っても『JJ』が置いてあるくらいのブーム。『CLASSY.』はあの『JJ』を卒業した人がターゲットの雑誌…と言われても、「『JJ』を卒業」の意味もわかりませんでしたし、「お嬢様」がどういう人たちなのか予想もつかず、相当苦労しました。

けれど自分が何も分からない男性であることで、逆に読者に心を開いて話してもらうことができたのかもしれません。何の知識も先入観もない私には、ちゃんと教えないと大変なことになると思われたのでしょうね(笑)。

 

Q『CLASSY.』から始まり、その後も女性誌を手がけていらっしゃいますが、女性を対象にした雑誌作りで、気をつけていることはありますか?


これは光文社のカラーなのかもしれませんが、『Mart』に限らず、『JJ』、『CLASSY.』、『STORY』、『VERY』にしても、「とにかく読者に徹底的に話を聞いて企画を出す」ということが基本です。

『CLASSY.』時代、当時の編集長には何度も企画書をつきかえされました。「読者のことをわかったような企画書を書くな」と。読者に心から共感してもらえる雑誌を作るためには、目線は読者と同じか、それ以下でなければいけない。主役は読者の声であり、編集者は雑誌を通してその声をきちんと反映させていくのだということを徹底的に叩きこまれました。

時にプロの悪い癖で、読者の話の途中で、自分の中の知識や経験から結論を導き出したくなる。でもそれをグッと我慢して、最後まで読者の声に寄り添い続ける。すると、自分でも予想していなかった発見がある。一人の読者が言ったことが、多くの人が思っていることを代表して言っていたという結論が見つかることさえあるのです。

 

Qたとえばどのようなものでしょうか?


たとえばポッキーの中袋の話があります。江崎グリコ(株)とコラボして、新しいコンセプトのポッキー開発に取り組んだことがありました。『Mart』読者とグループインタビューや試食会を行う中で、「ポッキーをおしゃれなお菓子屋さんのようなスイーツにするにはどうすればいいか」という会話になりました。「いやいや、ポッキーはそういうスイーツではないでしょ、ありあわせのお菓子だし」と話しているうちに、ある普遍的な事実が浮かび上がってきたのです。

誰もがいつもいつもデパ地下のスイーツでお客様をおもてなしできるわけはない。専業主婦やキャリアウーマン、子どもがいるいないなど、立場や頻度は違っても、「スーパーやコンビニのありあわせのお菓子で客人をもてなさなければいけない状況」は、誰にでもある普遍的なシーンなのではないかと。

そこから「そんな時ポッキーをどのように客人に出すか?箱そのままは出さないよね?」という方向に話が進み、一人の読者が「レースのペーパーにのせて出す」と。それなら中袋がレースでオシャレであれば手間が省けるよね、と中袋がレース模様になったポッキーを開発することができたのです。

 

Qなるほど。他にも商品開発で企業の広報の方と仕事をされることが多いと思いますが、印象に残っている広報の方はいらっしゃいますか?


読者の共感を呼ぶものを生んだ広報の方たちには三つの共通点があるのではないかと思っています。

一つ目が、編集者と同じように、読者の話を最後まで聞くこと。

二つ目が、生活者の視点を持っていること。
たとえばハンドソープ。どこに住んでいようと、どんな立場であろうと、「家事をしている自分が所帯染みている」と思う気持ちは同じです。ハンドソープは家事に手を染めなければいけない節目に使うもの。だからポンプのヘッドのデザインや匂いに癒されて救われる…そうした生活者の気持ちが理解できる広報は良いものを生み出すと思います。

「値段が安いから買うのだろう」と決めつけていたのでは、共感を呼ぶ商品は作れません。消費者は企業が発信する商品が、本当に自分たちのことをわかっているかをしっかり見ています。

三つ目が、消費者による二次創作を認めること。
『Mart』の主婦たちは、企業が用意したホームベーカリーのレシピには見向きもせず、自分たちで新たな使い方を生みだしていきました。

食べるラー油にしても、消費者の二次創作がヒットの鍵でした。企業側が、消費者の二次創作を否定したら、ブームは起きなかったと思うのです。
消費者の二次創作に反対する企画や開発の人たちとの折り合いをつけ、どこかで消費者側に主役になってもらうタイミングを作るのも、これからの広報の役割になってくるのではないでしょうか。

 

Q今後どのような情報発信・コンテンツ作りを目指していきたいですか?


『Mart』は、読者が一方的に情報を受け取るのではなく、そこに共感し、共有し、読者自身が新しい何かを生み出していくような雑誌でありたいと思っています。

また、ある新入社員が、「私が雑誌を好きなのは、“自分の目指す道は間違えじゃない、それでいいんだ”と背中を押してくれるから」と書いているのを見た時、妙に納得してしまいました。

凛とした上質な白いシャツを着たいと思っているけれども、もしかしたらダサいかもしれない。 自分一人では不安に思っている時に、雑誌が白シャツ特集を組んだら、自信を持って着ることができる。みんな自分だけでは自信がないから、信頼できる何かに認めてもらいたいと思っているのです。
不安を感じている人が自信を持てるような、読者の声に寄り添うような雑誌を作り続けていきたいですね。

 

(取材年月:2013年12月2日)

大給 近憲氏

媒体名
Mart

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