アイキャッチ画像

系図系譜学に学問的「組織図」が誕生――インテリジェンス研究の応用と学史の機能革新を論じた分野体系論を発表

 系図系譜学研究所(所長:木下祐也)は、2026年11月2日、学術雑誌『系図系譜学論究』において「系図系譜学の理論体系構築のための試論(11)――分野体系論(1)――」を発表した。本論文は、系図系譜学が備えるべき下位分野の体系を学問目的から演繹する形で明示的・合理的に設計したものであり、情報収集・分析理論であるインテリジェンス研究の知見を系図系譜学に応用するアプローチを提示している。

【5大下位分野の体系が初めて確立――4つの学問目的への対応と共通基盤】

 従来のほぼすべての学問分野は、下位分野が自然発生的・オムニバス的に乱立しており、下位分野間の相互関係が不明確なまま運営されてきた。政治学や法学でさえ、下位分野間の連関関係が整理されているとはいえない状態にある。

 本論文はこの問題を正面から取り上げ、学問目的を達成するために下位分野間に有機的かつ階層的な連関システムを構築することが学問分野としての実効性に不可欠であるとした。その上で、系図系譜学が掲げる4つの学問目的に対応する形で、以下の5大下位分野を演繹的に設計した。

下位分野 対応する学問目的・性格
基礎研究 全分野共通の基盤(目的論・用語論・方法論・学史等)
個別研究 個別の系図譜における真の親族構成情報の解明
事象研究 系図譜にまつわる諸事象の類型・傾向・変遷の解明
研究環境構築 系図譜集・事典・データベースの編纂・構築
応用研究 他の学問分野への応用理論の確立

 この設計手法は、民主主義を実現するための統治機構を憲法が定める仕組みや、企業が事業目的を実現するために最適化された組織を構成するプロセス(経営組織論)に比された、学問分野の理論体系の骨格の策定である。

 

【基礎研究の下位分野を策定】
 基礎研究は、系図系譜学全体にわたる共通基盤を構築し知見を提供する下位分野である。本論文では、基礎研究を構成する下位分野として、目的論(学問目的を所管)・対象論(学問対象を所管)・分野体系論(下位分野の体系の策定と下位分野間の連関関係の総合調整を所管)・用語論(学術用語の定義の策定を所管)・方法論(各種研究方法の手続に加えてインテリジェンス機能すなわち調査研究活動に有用な知見の蓄積・提供を所管)・学問意義論(研究成果の外部効果の解明と活用の分析を所管)・学問定位論(系図系譜学と他の学問分野との異同・境界および諸学問分野の中での系図系譜学の位置づけの解明を所管)・学史(先行研究の論拠の復元・特定、論文間の依存関係のマッピング、系図系譜研究史の編纂を所管)の8分野が策定された。

 

【インテリジェンス研究を先祖調査に応用】

 本論文は、情報機関の情報収集・分析理論として知られるインテリジェンス研究の知見を、系図系譜学に体系的に応用した。

 系図系譜研究における調査研究活動は、単に資料を読み取るだけでなく、資料の所在を見当づけながら広範な情報収集と高度な分析を連鎖的に行う点で、捜査活動・情報活動に類する性格を有する。この観点から本論文は、インテリジェンス研究における主要概念を系図系譜研究の具体的作業に対応させた。

HUMINT(Human Intelligence・人的情報):子孫・寺院・地元の郷土史家・老人へのインタビュー調査

IMINT(Imagery Intelligence・画像情報):古写真の超拡大による家紋特定等の画像解析

OSINT(Open Source Intelligence・公開情報):デジタルアーカイブ・郷土史等の公開情報の収集・分析

GEOINT(Geographic Intelligence・地球空間情報):土地台帳・名寄帳・航空地図による所有地・墓地の特定

 また、資料の収集・分析作業は、個別の家系を解明する個別研究(学問目的①)のみならず、系図譜にまつわる諸事象の類型・傾向・変遷を解明する事象研究(学問目的②)においても共通して必要となる作業であり、その知見は多くの下位分野において活用しうる。したがって、インテリジェンス研究は、方法論ないし個別研究に限定されるものではなく、事象研究を含む系図系譜学の研究活動全般にわたって応用されることとした。

 この方針に基づき、方法論は「Methodological Intelligence and Procedures(方法論的情報処理と手続)」と命名され、手続の規定にとどまらずインテリジェンス機能(有用な知見の蓄積・提供機能)を制度的に備えた資料収集系(Procedures & Intelligence for Source Collection)と資料分析系(Procedures & Intelligence for Source Analytical Procedures)が設置された。これにより、「どこを探せば資料の発見可能性が高いか」という実践的知見を学問体系として蓄積・提供する機能が制度的に確立された。

 なお、方法論全体の体系としては、すべての研究活動に通底する方法論通則(論証技術論・執筆技術論・先行論文分析論・理論構築論・帰納分析論・標準方法群)を先に置き、次いで資料収集系・資料分析系を配置するという構成となっている。

 

【学史に革新的機能を付与――論文間依存関係のマッピングと論拠の復元】

 本論文はさらに、学史(学問史)の機能について抜本的な再定義を行った。

 従来の学問分野における学史研究は、影響力のあった研究を時系列で並べた記念誌・沿革史的なものに留まっており、論文間の引用関係・依存関係の把握についても、外部の文献データベースが引用データを機械的に集積するにすぎなかった。こうした集計は、ある論文が別の論文に肯定的に依拠しているか否定的に言及しているかという質的・論理的連鎖の評価を行わない。そのため、先行研究の論拠が後行研究によって否定された場合に連鎖的に影響が波及する事態を管理する機能を持っていなかった。

 特に系図系譜研究においては、出典の記載が不十分または皆無な先行研究が多く、論拠そのものが不明なものも少なくない。

 そこで、本論文は、学史を所管する研究者が、論文間の依存関係を質的に評価してマッピング・データベース化し、かつ論拠不明な先行研究について論拠の復元・特定を行うことを、学史の制度的機能として明示的に位置づけた。これは、自然科学・医学における撤回論文の「ドミノ効果」として論じられてきた問題意識に通じるが、明示的な撤回にとどまらず後行研究による先行研究の否定まで射程に入れた点において、既存の学問分野の学史の慣行にはみられない。

 

【今回確定した分の下位分野の体系】

最高規範
├ 基礎研究
│ ├ 目的論
│ ├ 対象論
│ ├ 分野体系論
│ ├ 用語論
│ ├ 方法論
│ │ ├ 通則
│ │ │ ├ 序論
│ │ │ ├ 論証技術論
│ │ │ ├ 執筆技術論
│ │ │ ├ 系図譜に関する特則
│ │ │ ├ 先行論文分析論
│ │ │ ├ 理論構築論
│ │ │ ├ 帰納分析論
│ │ │ └ 標準方法群
│ │ ├ 資料収集系
│ │ ├ 資料分析系
│ │ └ 研究環境構築系
│ ├ 学問意義論
│ └ 学問定位論
├ 個別研究(学問分野①相当)
├ 事象研究(学問分野②相当)
├ 研究環境構築(学問分野③相当)
└ 応用研究(学問分野④相当)

 

【系図系譜学研究所について】

 系図系譜学研究所は、1971年から半世紀続いている木下家先祖調査を源流とし、ご家族・ご先祖様の生きた証を残す先祖調査・家系図作成・人物事典編纂サービスに加えて、これまで理論体系が研究されてこなかった系図系譜研究を系図系譜学として構築している。系図・系譜に関する実務と学術の双方を扱う専門機関である。

https://genealogy.jp/ja/



ログインするとメディアの方限定で公開されている
お問い合わせ先や情報がご覧いただけます

添付画像・資料

企業情報

企業名 系図系譜学研究所
代表者名 木下祐也
業種 その他サービス

コラム

    系図系譜学研究所の
    関連プレスリリース

    • クリックして、タイトル・URLをコピーします
    • facebook
    • line
    • このエントリーをはてなブックマークに追加

    プレスリリース詳細検索

    キーワード

    配信日(期間)

    年  月  日 〜 年  月  日

    カテゴリ

    業界(ジャンル)

    地域