ラウンドテーブル「マレーシア2015/2016年の動静と2017年の展望」【無料・登録不要】日本マレーシア学会(JAMS)関東地区研究会

日本マレーシア学会(JAMS)関東地区研究会のおしらせ

登録不要で会員・非会員を問わず来聴を歓迎致します。

日時：2017年5月27日（土）14時～17時

場所：立教大学池袋キャンパス 5号館2階5203教室

タイトル： ラウンドテーブル「マレーシア2015/2016年の動静と2017年の展望」

司会・報告１：福島康博（立教大学、東京外国語大学）

報告２：川端隆史（ユーザベース、東京外国語大学）

全体要旨（福島康博）：

2015年2月28日、JAMS関東地区研究会で開催したラウンドテーブル「マレーシア：2014年の動静と2015年の展望」に続き、ラウンドテーブルの２回目を実施する。

本ラウンドテーブルは、2015年から2017年前半までにマレーシアで起きた出来事を振り返るとともに、2017年後半の展望を探ることを目的とする。複数の話題提供者より提起されるマレーシアに関する主要な出来事に対し、参加者とともに議論を行うことにより理解を深めていきたい。

報告１ 要旨：

福島康博 「話題提供： 2015年～2017年5月のマレーシアの主要な出来事 ―マレーシア日本語メディアの分析から―」

ラウンドテーブルの話題提供として、2015年から2017年前半までにマレーシア内外で起きた主要な出来事を挙げるとともに、2017年後半に起こりうることについて検討を行う。

同期間においては、①政治分野においては1MDB問題、イスラーム刑法導入をめぐるPASの分裂とマハティールによる新党結成に伴う野党連合の枠組みの変化、②外交分野では金正男殺害事件をめぐる北朝鮮との関係悪化、KL・シンガポール間高速鉄道計画の進展と遅延、ロヒンギャー難民をめぐるミャンマー政府との対立、④社会経済分野ではGSPの導入、外国人労働者の雇用制限と人頭税の値上げ、など多様な出来事が起きた。

このうち主要な出来事の選定にあたっては、マレーシアで発行されている日本語メディアを用いる。同メディアの分析を通じて、マレーシアにおいてリアルタイムで発生していることを理解していくことを目指す。

報告２ 要旨：

川端隆史 「マレーシア経済： 脆弱性と強靱性、そして多国籍化する企業」

マクロレベルの不安と、企業ミクロレベルのダイナミズム。これは、足元のマレーシア経済の特徴を一言で表現する場合の、発表者の見方だ。

最近のマレーシア経済は、ダウンサイド・リスクが強く懸念されている。成長率は2014年に6%と好調だったが、原油価格の下落などを背景に、2015年以降は減速傾向だ。金融市場でもマレーシア・リンギットがアジア通貨危機時の最安値を割った。ナジブ首相の関与が疑われる1MDB問題は、市場参加者の間にガバナンスに対する大きな疑義を産み、通貨安に影を落とし続けている。

しかしながら、マレーシア経済の現状について、マクロデータや多国間比較に基づいた客観的な分析は少なく、マスメディアが発信するネガティブ・バイアスに影響されて主観的に見られている部分も少なくない。

他方、ポジティブな側面として、ここ2、3年で加速化しているマレーシア企業の多国籍化を指摘できる。これは、従来のように投資は先進国から新興国へと動く、という見方を覆すものであり、新興国の新たな成長パターンとして注目に値しよう。とりわけ、病院経営のIHHヘルスケア、格安航空のエアアジアの多国籍化は早い展開で進んでいる。また、ボーングローバル型のスタートアップ企業が勃興している点もユニークだ。

本発表では、マレーシアの足元のマクロ経済の環境を脆弱性と強靱性を浮き彫りし、今後注目すべきマレーシア企業の多国籍化について現状を整理する。