バナジウム市場、2020年代半ばまでに余剰供給が大幅に拡大予測

株式会社グローバルインフォメーションは、市場調査レポート「バナジウム:2029年までの展望 (第18版)」 (Roskill Information Services) の販売を7月31日より開始いたしました。

バナジウム市場にとって、2018年から2019年にかけてジェットコースターのような出来事がありました。五酸化バナジウム(V2O5)価格は、2018年11月に33.9米ドル/ポンドまで急騰しましたが、新鉄筋規格とバナジウム酸化還元電池(VRB)への高い期待は実現せず、2020年1月には6米ドル/ポンドまで下落し、2年間の上昇分が帳消しになりました。

 

中国において、より高いマイクロアロイ含有量を意味する新鉄筋基準の実施は、体系的な施行がなされていないため、不規則なものとなっています。さらに、価格差の拡大をきっかけにフェロバナジウムからフェロニオビウムへの代替が予想以上に増加したことが予想需要に影響を及ぼしています。フェロバナジウムとフェロニオビウムは価格平価に戻り、バナジウムの使用には一定のメリットがありますが、完全に逆転することはないと予想されます。製材所がニオブに慣れ、技術的な変更を行った後、完全に元に戻るとは考えにくいため、鉄筋の微細合金化需要の一部はフェロニオビウムによって捕捉されるでしょう。

 

2019年のバナジウム需要は、主に中国の鉄鋼生産の大幅な増加に牽引されて堅調に推移しました。需要の拡大は、スラグ生産者と炭鉱生産者双方からの供給の増加と一致しており、市場は十分な供給を維持しています。新型コロナウイルスがサプライチェーンと世界経済全般に影響を与えると予想されていますが、市場は2020年にはバランスを取り戻すとみられています。

 

バナジウムの中期的見通しは、需要と供給の両方に影響を与えるいくつかの要因によって形成されるでしょう。20年間の鉄鋼生産量の増加を経て、中国経済の成熟に伴い、鉄鋼生産量が平坦化し、バナジウムの需要が徐々に鈍化すると予測されています。中国の粗鋼生産量は、2020年代半ばにピークを迎えようとしています。VRB技術の開発は、新たな主要需要源を提供する長期的な可能性を秘めていると考えられますが、2020年代にその規模は限定的になると予想されています。

 

中国からの原料供給は、スラグ生産者がフル稼働に近づきつつある一方で、炭鉱の生産は技術的、環境的、経済的要因に依存しているため、増加は限定的になる見通しです。しかし、バンカー燃料中の硫黄分を削減する2020年1月以降のIMOの新規規制を受けて、バナジウム供給は構造的な変化に直面する可能性があります。この規制により、製油所で生産される使用済み触媒の量が増加し、これをリサイクルもしくは廃棄しなければならなくなります。後者の持続可能性が低いことを考えると、この二次供給源から生産されるバナジウムの割合は今後数年で大幅に増加すると予想され、残渣油の利用可能性が高まれば、生産コストも低下するとみられます。バナジウムの二次供給の増加は、製品を市場に投入しようとしている他の新規バナジウムプロジェクトとの競争の主な原因となるでしょう。

 

こうした需要と供給の動向は、今後10年間でバナジウム市場の形を変えていくことになるでしょう。VRBによる需要の大幅な増加を除けば、2020年代半ばまでに余剰供給が大幅に拡大すると予測されています。

 

【 当レポートの詳細目次 】

https://www.gii.co.jp/report/ros930098-vanadium.html

 

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