ハート出版、異色の捕虜体験記『英国人捕虜が見た大東亜戦争下の日本人─知られざる日本軍捕虜収容所の真実』を刊行

数年前、米国人捕虜の体験を描いた『Unbroken』(映画およびその原作)が、日本でも話題となった。その主人公ザンペリーニがいた大森捕虜収容所が、本書の主な舞台である。本書は、その内容が極めて正確であり、当時の捕虜収容所の日常や、日本人と捕虜たちとの、より現実に近い関係を知る上で、たいへん貴重な“史料”となるものである。といっても、本書は決して堅苦しい内容ではない。この、デリク・クラークという一英国青年の体験記は、英国流のユーモアにあふれた波瀾万丈の“冒険物語”というべきものである。さらに、巻末の訳注には、登場する人物や出来事についての詳しい解説など、本書をより深く理解する上で必要な情報が大量に掲載されている。特に「大森捕虜収容所」に関しては、元所員の方の協力もあり、本文と訳注を合わせれば決定版とも言える内容となっている。

新刊のお知らせ

 

タイトル:英国人捕虜が見た大東亜戦争下の日本人

サブタイトル:知られざる日本軍捕虜収容所の真実

著者名:デリク・クラーク(Derek Clarke)

訳者名:和中 光次(わなか みつじ)

体裁:四六版・並製・304ページ

定価:1944円(本体:1800円)

配本日:2019年2月27日

 

書籍紹介:http://www.810.co.jp/hon/ISBN978-4-8024-0069-5.html

 

英国人捕虜が見た大東亜戦争下の日本人

 

日本軍の捕虜となった欧米人が書いた体験記は数多く出版されているが、その中で本書はかなり異質な部類に属する。

それは、本書の内容が、翻訳者が驚愕するほど正確であり、著者が過ごした捕虜収容所の日常や、日本人と捕虜たちの関係を知る上で、極めて貴重な“史料”となるものだからである。それに加え、本書は誰もが親しめる“冒険物語”である、という点でも異質である。著者クラークは子供の頃からキプリング(『ジャングル・ブック』の作者)の冒険小説が大好きで、世界中を冒険するという夢を実現しようと英陸軍に入隊した。本書が、英国流のユーモアが随所にあふれた、冒険物語調の内容となっているのはそのためである。

 

クラークは画家であるということが、本書をさらに独特なものにしている。著者直筆の味わい深い挿絵が多数含まれているということもあるが、それだけでなく、画家としての観察眼によるものであろう、門司から東京までの一連の風景の叙述など、まるで美しい絵巻物を見ているかのようである。

 

本書の大筋は次の通りである。

 

シンガポールを目前にして、日本陸軍機の攻撃を受け、炎上するエンプレス・オブ・アジア。

 

クラークが自ら望んだ海外派兵は、ルーズベルトとチャーチルによる大西洋会談で、現実のものとなった。米海軍が英陸軍部隊を中東まで輸送することになったのである。クラークの乗る船は、米海軍の空母や戦艦に守られて、大西洋を横断してカナダに向かい、そこで米輸送船に乗り換え、南アフリカに向かう。大東亜戦争が勃発すると、行き先は東南アジアに変更され、目指すシンガポールを目前にして、日本陸軍機の猛攻を受け、船が撃沈されてしまう。上陸したシンガポールで、歴戦の日本陸軍部隊と最前線で戦うも降伏。そこからクラークの、長い長い捕虜生活が始まる。クラークには何度も不思議な運命の力が作用して、あの泰緬鉄道建設に駆り出されることなくシンガポールから台湾へ、そして東京へと送られた。一芸に秀でた捕虜たちが、プロパガンダ放送の要員候補として東京に集められたのである。絵の得意なクラークもその一人だった。

クラークがいちばん長く過ごしたのが、東京都大田区の大森捕虜収容所(現在の平和島競艇場)だ。プロパガンダ要員から外れたクラークは、品川区勝島、江東区北砂の小名木川駅、荒川区南千住の隅田川駅、そして東京港の日の出埠頭や芝浦埠頭(港区、レインボーブリッジ近く)で労働することになる。

 

本書は、収容所での日常、作業現場での労働、空襲体験、そして、そのときの捕虜と日本人の人間関係の描写に、多くのページが割かれている。

 

クラークが見た空襲翌朝の東京の惨状。

 

作業現場での話は、捕虜たちが日本人を出し抜いて,如何に食料やタバコ、酒を盗むか、ということが中心となる。捕虜たちは、隅田川貨物駅のことを、出エジプト記の“乳と蜜のあふれる大地”と形容していた。駅構内に、捕虜にとって垂涎の的となる品々があふれていたのだ。

 

塩鮭を盗むのに成功したクラークだったが、ジャケットから鮭の尻尾が丸見え。

 

盗みがバレれば殴られる。だが大抵の場合、捕虜たちはまんまと日本人を出し抜いて、検査をすり抜け、盗品を収容所内に持ち込むことに成功する。それらは収容所内で売買され、“バロン”の称号を持つ盗みの達人たちが財を成していた。クリスマスの日などは、盗んだ材料で堂々とクリスマスケーキを作る猛者もいる。

 

著者クラークは、東京に来た当初は米俵を担ぐ体力もなく、仲間に迷惑をかけてばかりの自分を恥じていた。だが盗みの腕が上達するにつれ、どんどん体力もつき、英国にいたときよりも体重が増加するまでになる。クラークは、芝浦で肉体労働も盗みもそつなくこなせるようになったことを実感した日、帰りのトラックの中で「やっと私も芝浦の一部になったんだ」と、成長した自分に満足した心のうちを語っている。

 

冬の寒い日、木炭トラックが捕虜を運ぶ。

 

本書には紹介したい内容がたくさんあるのだが、圧巻は、なんといっても「シンデレラ」であろう。

1944年のクリスマス、この日、捕虜たちによる演劇ショー「シンデレラ」が上演された。その準備はなんと8月から始められ、収容所側も全面協力して豪華な衣装を映画会社から借りることもでき、プロ顔負けの本格的なショーに仕上がった。

 

映画会社から衣装を借りて本格的な劇となった「シンデレラ」

 

クラークはこのショーのことを次のように語っている。

「これまで観た中で、最高のショーだった。とても幸せな気持ちにしてくれた。皆が皆、そう思っていた。これほどのショーにこれまでお目にかかったことがなく、我々は存分に楽しむことができた(いや、あれから何十年も経つが、あんなショーには出会ったことがない。私は今でも、あの『シンデレラ』が人生で最高のショーだと思っている)」

 

このショーが素晴らしいものであったことは、大森にいた多くの元捕虜が語っているが、その内容を詳細に記述しているのは、おそらく本書だけである。クラークの巧みな描写により、読者も「シンデレラ」を観劇したかのような気にさせられるだろう。

 

「シンデレラ」が上演される日、芝浦の親方たちも家族を連れて、クラークたちのいる兵舎に顔を出している。普段面倒を見ている捕虜たちの晴れの姿を見にきたのであろう。捕虜の中には大切な赤十字の慰問品の一部を親方に分けている者もいる。捕虜たちは仲間内では日本人を罵っていたが、両者の間には、少なくとも表面的には良好な関係があったことが見て取れる。

 

捕虜と日本人の良好な関係は、芝浦の作業現場の描写でも見られる。当時、男手の不足から14、5歳の少年が警戒員として捕虜の作業を監督していた。作業が始まる前、クラークになついている少年警戒員が、絵を描いてほしいとお願いする。その対価はタバコ3本だ。クラークは依頼通りのワイセツな絵を貨車の側面にチョークで描き始める。すると捕虜仲間がもっとこうした方がいいとアドバイスする。構内に入ってきた日本人のトラック運転手もそれに加わり、さらにどぎついアドバイスをしてくる。絵が完成するとみんな笑顔で絶賛し、その後、作業が始まる、といった具合だ。

 

芝浦の班長(親方)、“スパイダー”ことチバさん。

 

捕虜と日本人の良好な関係を示すエピソードは他にも多数ある。ただし、物資が極めて不足した日本の戦時下の、しかも捕虜という立場にあり、中にはひどい日本人もいて、クラークの捕虜体験は全体を通して過酷なものだったことは間違いない。実際にクラークは何度か重い病を患い、死にかけたこともあった。

 

世界を大きく揺るがした第二次世界大戦が終わって今年で74年。その揺れは未だ収束していない。過酷な捕虜体験を“冒険”と表現することに違和感を持たれる方もいるだろう。それももっともなことである。

しかし、あの戦争が遠い昔の出来事となったとき、この作品は、きっと世界中の人々から、笑いあり涙ありの痛快な冒険物語として愛されていることだろう。そう確信させる作品である。

 

 

著者・デリク・クラーク(Derek Clarke)について

 

1921年8月生まれ。イングランド出身。セイクレッド・ハート・カレッジに進学。

子供の頃からキプリングの冒険小説に憧れ、世界中を冒険したくて英陸軍に入隊。シンガポール陥落後、日本軍の捕虜となる。絵が得意なクラークは、プロパガンダ要員として東京の大森捕虜収容所に送られるも採用されず、品川区の勝島、江東区の小名木川駅、南千住の隅田川駅、そして港区の日の出埠頭や芝浦埠頭で労働する日々を過ごした。本書では収容所、作業現場、そして空襲の体験を克明かつ正確に綴っている。

戦後は、オックスフォードシャー州テームにアトリエを構え、そこで妻ジョアンと暮らしながら、プロのアーティストとして活躍。ビール会社サミエル・スミスが経営するパブの看板デザインなどを担当した。2000年12月に79歳で他界。




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