星めぐる高原の劇場 ついに上演開始!【観劇レポート】
長野県・茅野市の山間に佇むペンション「ライムライト」にて、宿泊型イマーシブシアター『ライムライトの宿泊記 ―消えた小説家の遺作―』が好評開催中です。本作は、観客自身が登場人物の一人として“物語の中に泊まり込む”演劇体験。道中の景色と同時に始まる物語は、ペンションの中で展開する俳優たちの会話や出来事を通じて、観客を物語世界へと引き込みます。一晩という限られた時間の中で、参加者それぞれが自分だけの物語を体験する、まさに「人生に残る一夜」を味わうことができます。
今日は、長野県茅野市の山あいにあるペンション「ライムライト」にて、7/25(金)に初日を迎えた宿泊型イマ―シブシアター『ライムライトの宿泊記ー消えた小説家の遺作ー』をご紹介したいと思います。
ここで行われているのは、“ただの旅行”でも、“ただの演劇”でもありません。
これは、泊まることで物語に入り込む、《宿泊型イマーシブシアター》という、新しいエンタメ体験です。
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※ネタバレはありませんが、当企画の楽しみ方と、各ルートの選び方は記載しております。嫌な場合はキャラクターの項目は飛ばしてご覧ください。 より作品を楽しんでもらえるよう、記事にしてみましたので、興味のある方は最後まで是非お読みください。
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物語の入口は、この景色から。
今回の会場が位置するのは、長野県茅野(ちの)市にある高原リゾート地。
茅野駅から車でおよそ40分。車山高原や白樺湖を眺めながら、ビーナスラインを走り抜けていくと、目の前に広がるのは、広大な緑と空、澄んだ空気、そしてどこまでも静かな時間です。 都会の喧騒とはまるで無縁のこの場所に着いた瞬間、「あ、ここはもう、日常じゃないな」と感じます。
そのひんやりとした空気と静けさは、このあと始まる物語への導入口となります。
冬にはスキーヤーたちで賑わうリゾート地の一角に、今回の会場となるペンションが佇んでいます。 名前は、「ライムライト」。
【ライムライト】とは、 もともとは、舞台で人や物に強い光を当てる照明の名前。主役に当てられることが多かったけれど、本当は“その瞬間に語られるべきもの”を照らす光でもあるんですね。 この宿の「ライムライト」が照らすのも、 誰かの胸の奥に残った、小さな記憶や言葉たちなのかもしれません。
まるで、絵本の1ページをそのまま切り取ってきたかのようなペンション。
中に一歩足を踏み入れると、ふわっと木の香りが迎えてくれました。 内装はどこを見ても派手さはないのに、ひとつひとつが丁寧であたたかい。 「ここに泊まる人のことをちゃんと考えてくれてるんだな」と思えるような、そんな優しさに包まれた空間です。
初めて訪れたはずなのに、不思議と落ち着ける場所。 日常の延長線上にはないのに、どこかで出会ったことがあるような――そんな不思議な安心感が、この「ライムライト」にはありました。
気づけばもう、物語の中に一歩足を踏み入れています。
何気ないチェックインの時間さえ、この宿では静かに“プロローグ”として流れていくようで。 スタッフのちょっとした言葉や、窓から差し込む光の角度さえも、なぜか意味がありそうに思えてくるから不思議なペンション。
ちなみに、19時開演の日は15時からチェックインが可能とのこと。 少し早めに訪れて、この空間にゆっくりと体をなじませる――そんな時間の過ごし方も、とてもおすすめです。
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“イマーシブシアター”って何?
まず「イマーシブシアター」とは、ざっくり言うと“没入型”の演劇のことです。
普通の演劇だと、観客は客席に座って舞台を「見る」スタイルですよね。
でもここでのイマーシブシアターはまったく違います。 観客が物語の世界そのものに入り込み、体験するんです。 演者さんたちはすでにその世界に“住んで”いて、僕たちも彼らが会話している場所に自然と同席します。 時には話しかけられたり、逆に無視されたりもします。 だから「ただの観客」ではなくて、「物語の一部」としてその場にいることを、静かに、でも確かに感じられるんですよね。 つまり、「見る演劇」から「いる演劇」へと昇華した体験が、このライムライトの宿泊体験というわけです。 難しく考えずに、物語の中にすっと溶け込む感覚を味わってみてください。
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とはいえ、演劇を知らなくても大丈夫。
「イマーシブシアターって何?」 「演劇ってちょっと難しそう…」 そう思った人、安心してください。 僕も最初は「演劇なのに泊まるってどういうこと?」って思ってました。 でもここでの体験は、むしろ“演劇に詳しくない人”の方が、素直に楽しめるのかもしれません。 なぜならこれは、“物語を追う”というより“誰かと夜を過ごす”体験だから。 上手い演技とか演出とか、そういう知識は一切必要ありません。 気になる人の後ろをついていって、話を聞いて、同じ部屋にいて、「何が起こるんだろう」とわくわくする。 それだけで、もう物語の一部なんです。
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舞台設定は、“その夜だけ死者とつながる電話がある”宿。
さて、今回の物語の舞台はちょっと不思議な夜です。 「ファーストラスト流星群」という特別な流星群が見られるのは、その夜だけ。そして、このペンションには、こんな噂があるんです。 “流星群の夜、この場所には死者とつながる電話がある” その噂を確かめるために、ライムライトにはいろんな宿泊客が集まってきます。 オカルトに夢中なYouTuber、行き詰まった小説家、何かを探る謎めいた客…。 みんなそれぞれの想いを胸に、この宿にやってくるんです。 そして僕たち観客も、“ただの宿泊客”としてその中に入り込んでいきます。現実と虚構の境界がふわっと溶けていく瞬間。 まるで、夢の続きを歩いているかのような、そんな不思議な夜のはじまりです。
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どのキャラクターについて行くかで、まるで違う。
イマーシブシアターの一番の魅力って、観るルートを自分で選べることなんですよね。 最初に自由行動が始まって、好きなキャラクターについていくスタイルです。 ずっと同じ人についていくのもありだし、途中で気分を変えて別の人に切り替えるのもOK。 作品によってルールは少し違うけど、今回の場合は最初は一人のキャラをじっくり追いかけるのがおすすめです。 理由は単純で、そのキャラに愛着が湧くし、物語の流れもつかみやすくなるから。 というわけで、ここからは魅力的なキャラクターとそれぞれのルートをざっくり紹介していきますね。
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天野川鏡子(窪真理チャカローズさん)ルート:陽キャ系ポジティブ
まずは僕が実際に体験した鏡子ルートから。 鏡子さんは、オカルト系YouTuberという役どころ。 もうね、テンションがずっと高いです。最初から最後までギア5のまま突っ走るタイプ。 ズカズカと場内を動き回りながら、登場人物にも観客にもズバズバ話しかけてくれるので、こちらのテンションも勝手に上がっていきます。 しかも、リアクションがいい。 何を見ても面白がってくれるし、何かあるとすぐ突っ込むし、笑わせてくれる。 「静かに見守るより、一緒にワイワイしたい」 「とにかく盛り上がりたい!」 そんな方には全力でおすすめの、“引きが強くて賑やかなルート”です。
巡満福(佐藤新太さん)ルート:選択難関、でもその先が面白い
この方、ちょっと不思議な立ち位置です。 自由行動が始まると、誰に付いて行くか選択できますが、選択しづらい立ち位置という感じ。 でも、一度つかまえれば、そこからが面白い。 気ままに歩きながらも、ちゃんと観客を楽しませてくれるルート設計になっていて、「あ、この人、ウロウロしてるけど、楽しい」とつい惹き込まれてしまう。 一言で言うなら、“自由と発見のルート”。 「細かい流れとか気にせず、ふらっと演劇を楽しみたい」そんな方にはぴったりかもしれません。リピーターにもおすすめ。
十羽永遠(吉野めぐみさん)ルート:静けさと深みの交差点
この物語の鍵を握る、ペンション「ライムライト」の宿主。 落ち着いていて、少しおちゃめで、それでいてどこか懐かしさを感じる人。 エリアは基本的にはバーカウンターあたりが中心。他のキャラのように大きく移動することは少ないので、「動き回るのはちょっと疲れそう」という方にもおすすめ。 物語全体を静かに俯瞰できるような、“作品全体をじっくり味わえるルート”です。
四月一日綿(谷怜由さん)ルート:追えたらラッキー、ミステリアスな上級者編
小説家としてペンションに滞在している四月一日さん。 その設定通り、とにかく掴みどころがない。気がついたらいないし、いたかと思えばすぐどこかへ行ってしまう。 ついていくタイミングを逃すと、なかなか会話に入り込めません。 ちょっと上級者向けの“レアキャラ枠”ですね。 ただ、その分、つかまえたときの嬉しさや深掘り感はひとしお。「謎解きイベントとか好きです」「追いかけて謎を紐解いていくのが楽しい」 そんな方にはおすすめの”考察好き・探索型プレイヤールート”です。
宿木雨(山根明莉さん)ルート:静かで淡々、でも芯がある
このルート、ちょっとだけ特殊です。 開演前から椅子に座っていて、存在感はあるのに言葉少なめ。どこか淡々としていて、でも目が離せない。不思議な空気感があります。 話の展開もスムーズというより、少しずつ進行していくような、もやっとした流れ。 でもその分、「この人、何か抱えてるな」と思わせてくれる余白があります。 「テンション高いのはちょっと疲れる」 「困ってる人を助けてあげたい」 そういう方には、この“寄り添いたくなる系ルート”がハマるかもしれません。
白樺笑(大﨑萌々香さん/田口新奈さん)ルート:にこり、がすべて
まず声が通る。 しかも特徴的で、ほんとに“にこり”って名前がぴったりな明るい雰囲気をまとっています。 彼女についていくと、ほっと安心できる空気が流れています。 おしゃべりしながら、自然に物語の中心にも関わっていける、そんな印象です。 今回僕が観たのが、大﨑萌々香さんの回でしたが、ダブルキャストの田口新奈さんもきっと素敵な“にこり”を演じているんだろうなと思わせてくれるような、そんな余韻がありました。 「まずは物語の全体像を追いたい」「優しい気持ちになりたい」そんな方にはこの“癒しと軸のルート”を推したいです。
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脚本・演出・振付、どれも丁寧な職人技。
脚本・演出は藤井千咲子さん。今回の作品、藤井の脚本や演出の“らしさ”が、詰まってます。まずね、藤井が作るお芝居って、“あえてドラマチックにしすぎない”ところがあるんですね。 自然で、どこか日常的、すごくフラットで、空気感がナチュラルに進行されていく。
でもね、その一方で、 藤井が描くキャラクターは、ちょっと“日常を誇張した存在”でもあるんです。 ご近所にいたら気になる人。職場にいたら話しかけたくなる人。なんか、ちょっとクセがある。絵本やおとぎ話にも出てきそうな人。
で、これがまたイマーシブシアターとめちゃくちゃ相性がいい。
だって、観客が物語の中に入っていくこの形式って、リアルすぎても地味になっちゃうし、かといってキャラが作り物すぎると浮いちゃう。 でも藤井が生み出すキャラたちは、その絶妙なバランス感覚でちゃんと“物語に住んでる人”になってるんですね。
ただ、その分、脚本作りってすごく繊細で。 たとえば、あるキャラはもう筆が止まらない!ってくらい自然としゃべり出す役があります。
一方で、しっかり地に足をつけて、丁寧に言葉を積み上げていかないとキャラがブレちゃう役も出てきます。 その上で、イマーシブとなると、導線(どこで、誰が、誰に話しかけるのか)や時間の流れ、空間の使い方まで考えなくちゃいけない。 つまり、全キャラクターが“自分のルート”を生きながら、他のキャラともちゃんと交差していく必要があるんです。 いわば、 登場人物全員が主演みたいな群像劇を、迷路の中でリアルタイムに走らせてる感じですかね。 これはね、ほんとにすごいことなんですよ。
あと、藤井はたぶん、耳が良いと思っていて、 だから、今回の6つの声で、似た声がないということも、このサイズのイマ―シブシアターにとっては、とても大事な要素のひとつだと思います。
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もうひとつ、今回、個人的にすごく印象に残ったのが振付です。
振付を担当しているのは、浅野康之さん。
この振付がね、とても印象的。 振付のそのひとつひとつが、まるで絵本の中のワンシーンみたいに丁寧で、ちょっと不思議で、でもしっかり意味がある。 藤井の描く“日常と絵本の狭間”みたいな世界観を、そのまま身体の動きで描いてるような振付。 きっと浅野さんは、普段から脚本をすごく深く読んでるんだろうなって思いました。 「この役は、どういう感情でここに立ってるのか」「このセリフ、本当は何を語ってるのか」 そういうことを、ものすごく細かく考えた上で、でもあくまで“おとぎ話”の世界を壊さないように振付けてる。 動きで感情を立ち上げるって、めちゃくちゃ難しいんですけど、今回その世界観がほんとに自然で、観ててスッと心に入ってきました。
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ちょっとしたアドバイス。 開演30分前にはラウンジにいるのがおすすめです。 雰囲気作りがそこから始まっているのと、そこからゆっくり作品に引き込まれていく時間が、よりその後の物語を楽しめるものになっていくと思います。
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宿としての「ライムライト」が本当に良すぎる件
そして、どうしても伝えておきたいのが―― 宿としての「ライムライト」が、本当に良すぎるということ。 この場所は、ただの“舞台装置”ではありません。 ちゃんと「泊まる」こと自体に価値がある宿なんです。 まず、食事が素晴らしい。 夕食も朝食も地元・長野の食材をふんだんに使っていて、味も見た目も大満足。 気取らないけれど丁寧で、どこかほっとする料理ばかり。 スタッフの方々も本当にあたたかくて、演劇の話から地元の自然の話まで、よく笑いながら話してくれます。 そして、言わずもがな建物も。 部屋の窓から見える静かな景色。 廊下を歩いたときの、控えめな足音の反響。 早朝、誰もいないラウンジに差し込む光。 物語が終わっても、まだ朝まで続いているような気配が残る宿。 だからこそ、“演劇体験”と“旅”が、ここでなら違和感なく重なるのだと思います。
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自然と共に生きる、ライムライトの演劇
この演劇は、天気に大きく左右されます。 普通の演劇だったら「雨=ノイズ」かもしれない。 でもライムライトでは、むしろ「雨=没入感」。
“不完全”であることの豊かさこそが、イマーシブシアターの醍醐味だと思いました。
つまり、「予定調和じゃないこと」が、この演劇の本質。 役者たちはその日その時の天気や空気に合わせて、呼吸を変え、動線を変える。 観客である僕たちも、どこかその“自然との即興劇”の一部として、生きるように関わり、体験の価値もその日によって変わる。 それは「自然の中でやる演劇」ではなく、「自然と共に生きる演劇」。 ここでしかできない体験が、確かにここにあります。 「地方×演劇」の可能性を、真剣に感じた夜 今回、「観光地の宿」で「演劇」がこれだけ自然に溶け込むのを見て、可能性を感じました。 旅という非日常の中に、演劇というもう一つの非日常が重なるとき、人はこんなにも柔らかく、作品の中に入っていけるんだなということを知りました。 地方だからこそできる、こうした演劇の形があって、もっと増えてほしいし、もっと応援されてほしいなと思う。
観光地には、美術館や博物館が当たり前のように根付いていて、地元のクラフトビールや、ここでしか買えない商品がある。 だったら、「ここでしか体験できない演劇」があってもいいですよね。 これを“観光”として届ける仕組みが整えば、演劇の未来はすごく広がるんじゃないか。 本気でそう思いました。
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まとめ:この夏、物語に泊まりに行こう。
というわけで、ライムライトでの体験は、「観る」じゃなくて「泊まる物語」でした。
都会の喧騒を離れて、自然に囲まれながら、ちょっと不思議な夜を過ごす。 それだけで心がリセットされるような感覚になります。 この作品は8月末まで上演中とのこと。 夏休みの旅行先、まだ決めてない方。 ちょっと変わった夏の思い出を作りたい方。 ぜひ、茅野の山あいで、物語に会いに行ってみてはいかがでしょうか。
文・日野祥太
▼チケット購入ページ
https://hoshimeguru.com/ticket/
【公演詳細】
宿泊型イマ―シブシアター 『ライムライトの宿泊記ー消えた小説家の遺作ー』
2025年7月25日(金)~8月31日(日)※期間中の金・土・日・祝開催
脚本・演出:藤井千咲子
振付:浅野康之
出演 窪真理チャカローズ/藤新太/谷怜由/根明莉/吉野めぐみ/大﨑萌々香(Wキャスト) /田口新奈(Wキャスト)
音楽:内田秋(No Fun)
照明:佐々木夕貴(eimatsumoto Co,Ltd,)
音響:今里愛(Sugar Sound)
映像:HI:SS
演出助手:吉野めぐみ
宣伝美術・WEB:文目ゆかり
撮影:岩田マサヤ
デザイン:Pomponette
宣伝美術モデル:星野文月
執行・運営:浅野康之、吉野めぐみ、藤井千咲子
制作協力:エスパクト トイメン
企画・プロデュース:WooHoo企画 後援:長野県、茅野市教育委員会
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企業情報
| 企業名 | PandemicDesign |
|---|---|
| 代表者名 | 日野祥太 |
| 業種 | エンタテインメント・音楽関連 |









