アイキャッチ画像

なぜ新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言下、秩序ある東京の夜の街を写真に収め、写真集を作ったのか? - 写真集『Night Order』刊行にあたって

写真集『Night Order』は、写真家の小田駿一が、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言下、秩序ある東京の夜の街を捉えた写真集です。この写真集は、クラウドファンディングプラットフォーム「Makuake」において実施した「Night Order Project」でのご支援を元に、制作しております。この場を借りて、温かいご支援頂きました皆様には改めて心から感謝申し上げます。今回は、写真集『Night Order』が完成し、200部を追加販売することが決定致しましたので、写真集を作ろうとした動機、そして写真集に込めた思いを皆さんにお伝えさせて頂こうと思います。 (WEB : https://store.night-order.com/

【1】なぜ写真集『Night Order』を作ろうと思ったのか?  

写真集『Night Order』

フォトグラファーとして、この事態を写真に収め、記録したい。  
新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が発令された最初の週末に、できる限りの防護をして、街に出ました。夢中でシャッターを切るなかで、特に印象的だったのが、いつもは人で賑わっている休日夜の飲屋街に人がいないこと。飲食店が協力し合って、営業を自粛していることでした。この光景は、経済的に逼迫している飲食店の方々の覚悟と、感染拡大防止への前向きな協力の結果だと気付かされました。荒涼とした有様とは対照的に、飲食店の勇気ある決断が夜の街に佇んでいる。漠然と、今の東京を捉えるのではなく、自分が撮るべきはここにあると感じました。

新宿センター街「思い出の抜け道」

この光景は、早期にこの事態を収束させるための未来に向けた希望です。一方で、秩序を守れないとこの光景が一時的なものではなく、慢性的な現実となって続いてしまうという警鐘でもあります。

有楽町ガード下

クラウドファンディングプラットフォーム「Makuake」において実施した「Night Order Project」では、希望と警鐘の入り混じる現実を写真に残し、みなさんにお伝えするとともに、勇気ある行動をとって下さっている飲食店の方々を微力ながら支援するプロジェクト実施しました。

新宿ゴールデン街

私が写真集の形に拘る理由 : 異常な速度で消費されていく写真達  
日頃、商業写真の世界でお仕事をしていると、写真の消費される速度がどんどん速くなっていることを感じます。アナログからデジタルへ、雑誌からWEBへ、情報がデジタルになり、利便性は増す一方で、個々の情報はどんどん存在感が希薄になっているように感じます。それは、1枚1枚、気持ちを込めて撮影する身からすると、少し寂しいことでもあります。気合いを入れた「これだ!」と思った1枚、早いと1日で、人々の目の前から、写真は消費され消えていきます。皆さんも、「これだ!」と思って、記憶に残っている写真はそこまでないのではないでしょうか?

 

10年も、20年も残り続けるために物質性を。  
この写真集は、100年に一度の感染爆発と言われた未曽有の危機を収めた記録的・報道的な写真を収めています。であるために、デジタルではなく、物質という形で、さらに欲張りを言えば、「10年後も、20年後も手に持っておきたい」 と思わせるクオリティーの高い写真集として形にしようと決めました。
 

【2】写真集『Night Order』に収められている写真とは?  

Night Order : 「秩序ある夜。夜の街に佇む、静寂と覚悟」

「Night Order」というコンセプトの元で、二種類のアプローチで作品を制作しています。

立石呑んべ横丁

一つめは、報道写真としてアプローチ。淡々と、装飾を削ぎ落として、目の前にある現実を捉えることで、ある時に存在した客観的な現実を体感できる作品になっています。新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言期間中の東京の夜の飲食街を中心に撮影をしています。

渋谷円山町

二つめは、抽象写真としてアプローチ。報道写真が荒涼とした現実を、淡々と伝えるのとは対照的に作り手としての思いを込めて撮影した作品です。夜の街で、一つ、二つと灯るネオン・照明などに着眼し、夜の街の楽しさ・明るさを表現している作品です。少しでも作品を通してみなさんが明るい気持ちになればという願いを込めています。

 

3】一冊ごとに異なる風合いをもつアートブックとして  

10年後も、20年後も読み継がれる写真集であってほしい

写真集の制作にあたっては、1枚の写真作品としてではなく、1冊の写真集に纏めるからこそ生まれる価値を意識しながら進めてきました。

写真集『Night Order』

もっとも大事にしたことは、「10年後も、20年後も読み継がれる写真集であってほしい」 ということ。

 

100年に一度の感染爆発と言われた未曽有の危機を収めた記録的・報道的な写真であるため、希望と警鐘の入り混じる混沌とした現実を写真集という形でこの世に残し、一つの戒めにし、後の世代の一助となればという思いがありました。私も、子供をもつ親でもあるため、私の子供、そして孫がこの凄惨な危機をしっかりと学習し、同じ危機に陥らないことも強く感じました。

 

そのためにも、写真作品の良し悪しを超えて、一般の写真集の枠を超えて、本当に大切にしてもらえる本とは何か、仕様とは何かを考えながら、完成したのが写真集『Night Order』です。

 

オリジナルであること - あなただけのために作られた1冊

「あなたのためだけに作られた1冊」 であること。今回、写真集のアートディレクション・ブックデザインを手がけたくれた、私が心から信頼するクリエイティブ・コレクティブCATTLEYA TOKYOの塩内浩二氏、鈴木恵翔氏が考えてくれた言葉です。

写真集の表紙の銀箔は職人が1点1点破り、1冊ごとに風合いが異なる。

写真集の表紙には、銀箔を施し、職人の方が1枚1枚銀箔を破り、剥がすことで写真のタイトルである「Night Order」のロゴ、そして写真集の説明文が現れてくる仕様にしました。

 

機械ではなく、人が1点1点作業しているので、写真集の表紙はそれぞれの方にとって、異なった風合いに仕上がります。500部という限定である部数であることに加えて、「あなた」にとって、世界に一つしかない風合いをもつ写真集が完成しました。

 

世界で初めてにチャレンジし、プロダクトとしての完成度を高めること

「オリジナルであること」に加えて、プロダクトとしての完成度が高くなければ長い間、手元において置きたいとは思わないだろう。

 

プロダクトの完成度を可能な限り高めるために、CATTLEYA TOKYOの紹介で、ユニークな製本をすることで、知る人ぞ知る篠原紙工さんに製本をお願いしました。

写真集の背の仕様は、世界で初めて仕上がりに。

その結果、本の背の部分をスケルトンにし、その上に銀箔をはり、樹皮のようなニュアンスをだす世界で初めての仕様で出す事になりました。*注:我々が知る限りで、世界で初めてという事です。

 

印刷に関しては、老舗の素晴らしい美術印刷をするサンエムカラーさんにお願いをし、デザイン・印刷・製本ともに、私の想像を超える仕上がりにすることができました。「オリジナルであること」「世界初の仕様を使い、プロダクトとしても完成度が高いこと」、私ができる範囲で本としても皆さんに長い間大切にしていただけるものができたのではないかと自負しています。

 

【4】今後に向けて  

社会のために、写真を使う:「Socio-Photography」の追求

冒頭でも書きましたが、私は商業写真家に憧れて、商業写真家になりました。商業写真家の仕事は「For Business」。デザイナーやビジネスマンの方と同様に、写真の技術を使って、ビジネスのお手伝いをしています。一方で、写真作家の方は「For myself」。アーティストとして、自分の内発的な創造的欲求を作品に込め、社会に問いを投げかけます。

私は、写真作家の方の、ある意味大衆に対して、「裸=本当の自分」を見せるような行為にある種の畏敬の念を頂いていました。と同時に、心のどこかで、自らが「裸」を見せたってそれが何になる。自分にはできないのではないか?という怖さも持っていました。

ただ、今回のプロジェクトで多くの方と一緒に写真作品を作る、写真集を通じて気づいたことがあります。「For Business」でも、「For Myself」でもないその中間地点くらいに、「For Others」「For Society」の写真があってもいいのではないかということ。写真しか取り柄のない僕でも、写真という手段を使って、身近な誰かを助ける、または社会に対して問題を投げかけてゆく。そんな写真家像を今は描いています。自分のためでも、ビジネスのためでもなく、誰かやもっと広くいうと社会のために、地道に何かできることを探していこう。今はそんな心境です。

 

【5】あとがき:皆さまへの感謝を込めて  

最後になりますが、今回の写真集は決して一人の力では作ることができませんでした。改めて、この場を借りて、写真集の趣旨をご理解いただき、写真集の制作にご協力頂きました下記の方々、ならびにここにお名前を記すことができなかったクラウドファンディングでご支援頂きました皆様、本写真集に多大なご尽力をいただきました関係者の皆様に深く感謝を申し上げます。(順不同・敬称略)

 

佐伯 貴史 / BARトースト  
武 宏 / bar toilet  
田中 開 / OPENBOOK  
早川 聖朋 / そのとうり  
川村 由紀 / 渋谷花魁  
松坂 愛 / 赤い部屋  
志賀 圭祐 / Bar Cigar  
林 亜季  
塩内 浩二 / CATTLEYA TOKYO  
星野 美緒

 

また、素晴らしい写真に仕上げてくださった制作メンバーの皆さんにも心から感謝を申し上げたいと思います。

 

アートディレクション:塩内浩二(CATTLEYA TOKYO)  
デザイン:鈴木恵翔(CATTLEYA TOKYO)  
制作・進行管理:CATTLEYA TOKYO  
印刷:株式会社サンエムカラー   
製本:有限会社篠原紙工

 

ここまでお読み頂き、本当にありがとうございました。
少しでも多くの方に、写真集が、そこに込めた思いが届くことを願って。



ログインするとメディアの方限定で公開されている
お問い合わせ先や情報がご覧いただけます

添付画像・資料

添付画像をまとめてダウンロード

企業情報

企業名 小田 駿一
代表者名 小田 駿一
業種 広告・デザイン

コラム

    • クリックして、タイトル・URLをコピーします
    • facebook
    • line
    • このエントリーをはてなブックマークに追加

    プレスリリース詳細検索

    キーワード

    配信日(期間)

    年  月  日 〜 年  月 

    カテゴリ

    業界(ジャンル)

    地域