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【宇宙ビジネスアイデアコンテスト S-Booster 2019】開催レポートVol.2 ~アジアから世界へ広がる宇宙利用のアイデア~

S-Boosterは「宇宙アセットを利用した、新たなビジネスモデルを発掘し、事業化を支援する」ことを目的としたビジネスアイデアコンテストです。第2弾となる今回のレポートでは引き続き、2019年11月25日に東京都中央区の日本橋三井ホールで開催された「S-Booster 2019最終選抜会」での、各チームの発表アイデアをご紹介します。

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【宇宙ビジネスアイデアコンテスト S-Booster 2019】 開催レポートVol.1 ~日本国内・アジア各国から優れたアイデアが集結~

https://www.value-press.com/pressrelease/237793

 

No.7 美肌ウェルネスツーリズム

チーム名:Be-SMAC/代表者名:山川弓香氏

ポーラ・オルビスグループで商品企画、肌科学、法務などに関わる3名のチーム「Be-SMAC」は、気象衛星ひまわりなど観測衛星で取得された地域別の水蒸気量、気温、エアロゾル量、紫外線量などデータと、同グループが保有する1800万件の肌データというビッグデータを使ったプラットフォームを開発し、肌にとって恵まれた環境をもつ地方都市を観光客に推薦し、温泉や日本食など地元の美容体験につながる観光資産を融合させた“美肌ウェルネスツーリズム”を立ち上げることで、地方を活性化させるビジネスプランを提案しました。

山川氏は、「肌は体調を写す鏡であり、肌にいいという感覚は女性を元気にする」と説明。湿潤な山陰地方を「うるおいゾーン」、紫外線量が低い東北・北陸の日本海側を「美白ゾーン」と名付け、「すでに島根県知事は美肌県として観光振興に本腰を入れると発表した」など、美肌観光の訴求力を強調。「まずは日本人と美意識の近いアジア女性をターゲットとし、ゆくゆくは世界に展開したい」とアピールしました。

質疑応答では、よりパーソナライズされた旅行プランの提案や、男性の美肌需要の掘り起こし、リピート需要喚起策などへの期待や賛同のコメントが寄せられました。

Be-SMAC 山川弓香氏

 

No.8 デザイナーソイルを利用した宇宙農業ビジネス「宙農(そらのう)」

チーム名:TOWING./代表者名:西田宏平氏

西田氏は、多孔質担体に微生物を付加して疑似的な土壌の機能を持たせた「デザイナーソイル」を、「うまい作物をつくる良い土地を、どこでも作り出す手法」として紹介。宇宙における植物栽培では、噴霧式水耕栽培よりもさらに輸送物資量が小さく済ませられる可能性があるとして、これを月や火星における現地調達・現地食糧生産に適用したいと訴えました。その準備として農家や企業、研究機関をつなぐ「宙農ラボ」を設立し、まずは地上でのターゲットとして、生産に必要な資源量を減らしつつも美味しさや健康を提供できるような、持続可能な栽培システムを担うデザイナーソイルを目指すと説明しました。

質疑応答では、デザイナーソイルのポテンシャルについて問われ「宇宙飛行士の作業量削減や、リアルな土壌よりも美味しい作物を作れる可能性がある。研究途上にあるデザイナーソイルを広める“伝道者”の役割を担いたい」と回答しました。

TOWING. 西田宏平氏

No.9 Smart Traffic Light Management for Smart City by QZSS & 4G/5G Platform

チーム名:AI.Space(タイ)/代表者名:Kanchanit Thumrongboonkate氏、発表者名:Sonskuln Thaomohr氏

タイの首都バンコクでは世界最悪レベルとも言われる交通渋滞により、1日当たり約100万ドルの機会損失が生じているとされています。交差点では配備された交通警官がそれぞれ手作業によって信号を切替えており、AI.SpaceのThaomohr氏は、その信号切替の制御をサポートすることで、渋滞緩和を目指す取り組みを紹介しました。具体的には、準天頂衛星システム「みちびき」をはじめとする測位衛星の信号を利用、4000万ユーザーを抱えるタイ最大の携帯電話会社AISと協力することで、車両の位置情報から都市内の渋滞状況をリアルタイムで把握。AIを使って都市全体を対象とした交通管制のための信号制御情報を生成し、交差点に居る交通警官の持つスマートフォンに、信号切替タイミングの推奨パターンを送信する、という仕組みです。すでにこの11月から警察当局と試行を始めており、「交通警官には、スマートな友人がやっとできた、と気に入ってもらえた」と評価を紹介し、年間7200万ドル相当の機会損失を取り戻せるとアピールしました。また、村田製作所による交通カメラでの協力や、渋滞情報を広告配信のトリガーに活用する事業構想など、連携の輪が広がっていると説明しました。

質疑応答では、東南アジア地域をカバーするみちびきへの期待や、スマートフォンが示す位置情報が歩行者であるか車両であるかを見分ける手法などについてコメントがありました。

AI.Space Sonskuln Thaomohr氏(写真左)、Kanchanit Thumrongboonkate氏(写真右)

 

No.10 小型衛星の環境試験場シェアリングサービス

チーム名:SEESE from ABLab/代表者名:棚田和玖氏

棚田氏はまず、宇宙の過酷な環境下で衛星を正常に動作させるためには、強い太陽光や極低温、打ち上げ分離時の振動や衝撃、宇宙放射線などを模擬した「環境試験」がとても重要であり、衛星開発コストのうち約30%、開発期間の約半分を占めており、これらを短縮することが品質や生産性向上に大きく貢献すると説明。そこで、全国に散在している小型・超小型衛星向けの環境試験設備をWebプラットフォーム上で一元管理し、希望するユーザーと環境試験場をマッチングするサービスを提案しました。試験の予約から供試体の配送、試験サポートやコンサルティングまでワンストップで提供できるサービスを実現したいと述べました。

これにより、環境試験のハードルを下げ、新規プレイヤーの参入を促すばかりでなく、きちんとした試験を経て打ち上げることで、デブリ化する衛星を減らし、持続可能な宇宙開発につなげたいとアピール。さらに自動車や航空機、医療機器など他産業の試験需要への横展開や、試験手法が確かなものであることを保証する試験認証サービスの構築にもつなげたいと将来構想を語りました。

質疑応答では、「ヒアリングでは、試験設備が足りていないという民間企業の声もあり、そこに自治体運営の試験設備などをマッチングさせるニーズが見込める」などのコメントがありました。

SEESE from ABLab 棚田和玖氏

 

No.11 Green fuel for propulsion of spacecraft for sustainable and safe space exploration

チーム名:Manastu Space(インド)/Tushar Jadhav氏

インド工科大学ボンベイ校出身メンバーによるManastu Space社のTushar Jadhav氏は、まず会社名がサンスクリット語で「夢をかなえる」という意味であると紹介。そして宇宙機の推進・姿勢制御に使われてきたヒドラジンが「強い毒性のため過去には犠牲者も出ており、ハンドリングの手間は衛星のコストを押し上げている」「2021年までに米欧で使用停止が決まった」と課題を提示しました。

その解決策として、オリジナルな推進薬と酸化剤としての過酸化水素、独自設計の燃焼室や新たな触媒などから構成される推進システム「I BOOSTER」を提案しました。「I BOOSTER」単体では他社システムと比較して10%の効率アップと60%のコストダウンを同時に実現でき、現状の衛星の推進システムをそっくり置換すれば、衛星重量で25%、打ち上げコストでは30%の削減が可能とアピールしました。また宇宙実証に関してはISRO(インド宇宙研究機関)によるタイムラインを示し、「今後6~9年のうちに約15000機が計画されている100~200kg級の衛星をターゲット」「将来的には軌道上での再充填も可能にしたい」と訴えました。

また余話として、緊急時にはこの燃料から、人間が生存のために必要とする「水」「酸素」「熱」の3つを作り出すことができることから持続的で安全な開発であることも主張し、支持を呼びかけました。

質疑応答では、保守的で実績を重んじる宇宙関係者をどう説得するかと問われ、「60%のコスト削減と10%の効率アップが説得力となるだろう」と答えました。

Manastu Space Tushar Jadhav氏

 

No.12 「あしらせ」 みちびきを活用した視覚障がい者向け歩行支援センスウェア

チーム名:SensinGood Lab./代表者名:千野歩氏

SensinGood Lab.は、自動運転研究者である千野氏のほか、プログラマー、組み込み技術者、UXデザイナーで構成するチームです。千野氏は、誤って川に転落して亡くなった、目が不自由であった身内の事例をきっかけに「視覚障がい者にとっては、毎日が命懸け」と課題を提示。視覚障がい者の不安に応え、外出を促すインソール型ウェアラブルデバイスとして「あしらせ」を提案しました。

このデバイスは、準天頂衛星システム「みちびき」のサブメータ級測位補強サービスなどを活用して高精度に自己位置推定を行い、曲がり角や停止位置など、歩行支援につながる情報を足裏や足の側面に振動で伝えるものであると説明。

また、足の感覚にアプローチした理由として「視覚障がい者は外出の際に、周囲や路面の状況を知るために耳を澄まし、白杖の反応に神経を集中させているので、そうした感覚を邪魔せず、しかも忘れて出かけることのないよう、このデバイスをいわば“靴の中の仮想的な点字ブロック”と位置づけた」と解説しました。

期待される市場規模や、より多くのユーザーに安価に利用してもらうためのビジネスモデルも合わせて提示し、「1年以内に製品化して、より多くの人に届けたい」と支援を呼びかけ、アジアへの展開にも言及しました。

質疑応答では、屋内ナビゲーションについて問われ、「まずは外出を促すという意味で、屋内は対象とはしていないが、位置情報ビーコンなどインフラが整っていけば展開も考えられる」と回答。複雑なシステムによる機器制御の遅延に関わる問題については「その克服には自動車業界が有する技術も適用できると考えている」と答えました。

SensinGood Lab. 千野歩氏

 

審査員
(左上から)夏野剛特別審査員長、伊佐山元特別審査員、山崎直子特別審査員、柴崎亮介特別審査員
(左上から)ローラ・アンダーソン特別審査員、バラッド・クリシュ特別審査員、ダムロングリッド・ニアマド特別審査員、ウィー・メン・スー特別審査員

 

▽次回予告

 最終回となる開催レポートVol.3は3月24日(火)に配信予定です。

 



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企業情報

企業名 S-Booster2019実行委員会
代表者名 実行委員会
業種 その他サービス

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