郡内織の超絶技巧「ほぐし織」!その魅力と伝統を未来へつなぐプロジェクト
江戸時代には「郡内織」という織物のまちとして栄えた山梨県都留市。しかし時代の流れとともに、都留の郡内織は衰退する一方でした。そんな中、最近では郡内織の中でもほぐし織という超絶技巧の織物を使った傘づくりの担い手が誕生しています。伝統ある郡内織、ほぐし織をつなぎ、発展させるためのクラウドファンディングを実施します。
郡内織再興プロジェクト始動
郡内織発祥の地、山梨県都留市。
江戸時代に衣擦れの音の美しさから市民に愛された、長い歴史を持つ織物、「郡内織」。
色鮮やかな郡内織は、おしゃれな江戸の商人たちに大人気だったとか。
しかし、その発祥の地・都留市で郡内織の製品が作れなくなっている というのをご存じでしょうか。
郡内織は和服から洋服へといった服装の変化や海外産の安い織物の流入、実用性志向といった価値観の変化についていくことができず、その製造の存続や文化の継承が危機的状況となっています。
伝統技術は一度失われると二度と取り戻すことはできません。
特に伝統技術は、書類やITなどを使っての伝承というものが難しく、人から人へ伝えていく必要があり、そのような使命を担うのは今の時代を生きる私たちにあると考えています。
そのような意識から、まずは第一歩として、郡内織の中でも「ほぐし織」という技法を用いた「傘」を生産できる体制を再興しようと考え、傘づくり教室を行いました。
伝統的な技術ということで、それを担いたいという人は多いものの、技術を身に着けるための実習費用の負担は重く、すべてを実習生で担うことは難しい状況です。
そこで、クラウドファンディングという形で多くの皆様からのご支援を募ることにいたしました。いただいたご支援を活用して傘の担い手育成を行うだけでなく、郡内織製品の一貫生産、made in 都留の郡内織ブランディングを行うことで、かつての織物のまち・都留を取り戻し、都留市のまちづくりに寄与したいと考えています。
山梨県が誇る伝統文化を守り、時代に即した形で歴史を紡いでいきたい。
そんな想いでクラウドファンディングを実施することにしました。
https://camp-fire.jp/projects/view/452634
郡内織・ほぐし織とは
郡内織とは、山梨県の東部地域で作られる織物の総称のことです。
山梨県は甲府地方を国中、都留市などの東部地域を郡内と呼んでいます。
郡内織はその衣擦れの音の美しさ から江戸から明治にかけて非常に人気のある織物でした。
その理由は、糸の色を染めてから一列に並べ、織りながら色や柄を加えるといった形で作られるからです。
通常の織物は織られた後に色を付けるため、単一の織られ方になりますが、色や柄を考えながら織るため、独特の織られ方 になるんですね。
そこから出てくる衣擦れの音というのが非常に美しいという評価を得ていました。
そして、郡内織の中でもその技術の高度さから超絶技巧と評される のがほぐし織です。
ほぐし織は、織ったものを一度ほぐして、再度織るといった作業を行うため、その名前がつきました。
特に特徴的なのが、最初に織った後、型を使って染める 工程です。
通常は①織る②染めるという2つの作業だけですが、①織る②染める③織るといった3段階の作業をすることで、独特の模様を生み出す ことができます。
その独特の模様は、印象派の絵 を思い出させるものです。
衣擦れの音を楽しめる生活を
みなさんは、衣擦れの音を気にしたことがありますか。
現代社会は音にあふれていて、普段の生活で衣擦れの音を楽しむといったことはほとんどなくなっているのではないでしょうか。
また、日々の生活に追われていて、自分の身に着けているものの出す音に意識を向けることも少ないのではないでしょうか。
普段は傘をさすときも、しまうときも、雨のことが気になって、なかなか傘には目が向かないかもしれません。
傘をさして、外から室内に入る時、傘をしまう際に耳を澄ませてみませんか。
その微かな衣擦れの音を楽しむことができる。
そんなちょっとした時間、音を大切にする時間を過ごしてみませんか。
江戸時代から続く郡内織の発祥の地としての都留市の歴史
江戸時代には、郡内織は人気の商品となっており、都留市の主な産業は織物産業となっていました。
市域の80%を占める森林の多くは当時、桑畑として活用されていました。
都留市は江戸時代、城下町として山梨県東部地域(郡内地域)の政治・経済・文化の中心地として栄えたまちでしたが、それを支えたのは織物産業だったのです。
時代が進むにつれて、和服から洋服が好まれるようになり、織物としてのニーズは減っていくものの、戦後、昭和の時代までは都留市の各家庭では蚕が飼われるなど、その盛んな様子がうかがえていました。
しかし、昭和後期から平成になると海外からの輸入品などとの競合が多くなり、織物から産業転換をする会社が多くなりました。
現在も織物業は地場産業として都留市の中で大きな位置づけとなっているものの、それに関わる人が年々減少しており、織物業の再興と継承が都留市の悲願となっています。
現在、織物業を担う市内の会社は、傘づくりの企業が1社、ネクタイづくりの企業が1社、座布団づくりの会社が1社、布団づくりの会社が数社となっており、そのうち前3社については後継者がいない状態です。
中でも傘については、織物部分は市内で作っているものの、その組み立ては大阪で行っており、市内で織りから組み立てまで一貫して行える状態になく、一気通貫の体制作りが課題となっていました。
2021年1月に実施したミニチュア傘づくり教室は、募集5人に対して、15人ほどの参加意向があり、そのうち8人に受講いただきました。
そのうち、6人がさらに高度な技術を身に着けるための講座を継続して受講し、1人で傘の組み立てができる技術を身に着けることができました。
ただ、このような技術は教室終了後もそのスキルを向上させる場、技術を維持する機会というものが大切です。
そのため、谷村織物工業組合では、傘づくりのために必要となるミシンを購入し、受講生にはそのミシンが自由に使える環境を整えましたが、谷村織物工業組合事務所では十分なスペースがないため、受講生がミシンを使って活動ができる場所が求められるようになりました。
第2の取り組み:活動をする拠点を整備
そこで、今度は傘づくりが行える拠点を整備することにしました。
場所は、都留市役所から徒歩1分の市内の中心部です。
富士急行線の谷村町駅からも徒歩3分と非常に交通アクセスの良い環境になっています。
この周辺は、都留ミュージアム、商家資料館、屋台展示庫といった観光拠点があり、観光客が訪れるエリアになっています。
また、大月方面から富士山、河口湖方面へ向かう国道に面しているため、車で富士山などへ訪れる多くの観光客の目に留まる場所にもなっています。
傘づくりの担い手育成を始動
そんな織物業の担い手不足を問題意識として持っていたのが、都留市にある谷村織物工業組合(事務局:都留市商工会) のみなさんでした。
谷村織物工業組合に所属するのは織物業の会社のため、高齢化や後継者不足に悩んでいる方々です。
そして、ご縁あって私たち「まちのtoolbox」と連携をして、担い手育成の事業を行うことになりました。その最初の取り組みが、傘づくり教室です。
建物は、20年以上空き家となっていた物件をリノベーションし、再活用します。
傘づくりができるミシンをここに設置し、傘づくり教室の受講生の実習の場にするだけでなく、そこで作成された傘が目で見て、触って、購入ができる場にしたいと考えています。
また、市内で作られた郡内織のネクタイや座布団といったものも活用し、郡内織を感じられる、体験できる場所としていきます。
これまで都留市のこの地域に観光に訪れる方は、城下町や湧水といった観光資源に魅力を感じて訪問する方がほとんどでした。
今回のクラウドファンディングをきっかけに、そういった方々が郡内織・ほぐし織に目を向けていただける機会になればと考えています。
残された1つの課題:実習の場の不足
ただ、最後に1つ課題が残りました。
それは、受講生はミシンを使って傘づくりはできるようになったものの、受講生のレベルとしてはまだまだ不十分だということです。
一般的に、販売できるまでの力を身に着けるには2年ほどの修業期間が求められると言います。
それまではある程度、実習として練習できる場が必要なのですが、そういった実習にも材料費などのコストは少なからずかかってしまいます。
もちろん完成品は、傘としての機能は十分果たせるものなのですが、若干よれている部分があるなど、愛嬌のある 傘に仕上がることもあるため、必ずしも市販できるとは限りません。
傘づくりの実習生が作っている傘を面白いと感じていただけ、それを応援して使っていただける方がいることで、継続したスキルアップの機会を作ることができます。
これからの時代に即したものづくりを
これまでの世の中は、大量生産、大量消費とそれに伴う大量廃棄という経済でした。
実際、洋傘振興協会によると、日本国内だけでも傘の年間消費量は1.2億本にのぼるそうです。
毎年1人1本の傘を購入していることになります。
織物業界としてもファストファッションが流行っていますが、その一方で途上国の労働環境等人権問題が顕在化しています。
本プロジェクトは、製品を製造する生産者が「働きがいのある人間らしい仕事」として、誇りをもって生産する。
また、消費する私たちも、生産者の顔が見える、自分の気に入った良いものを長く使う、またそれを入手するためには必要な対価を支払う。
このような考え方を実現するための取り組みで、またこのような考え方に共感いただける方々と一緒に作り上げていきたいと考えています。
新しいライフスタイルを提案し、都留市に生業としての織物を取り戻す
現在、都留市で作られている郡内織、ほぐし織は、傘づくりのため大阪へ運ばれ、また販売のために東京に輸送されるといった形になっています。
これは、輸送のためのコストはもちろん、輸送による環境への負荷といった目に見えないコストもかかっています。
カーボンニュートラル、持続可能性という観点からも域内生産というのは大切な視点ではないかと考えています。
また、市内で製品化まで完結することができれば、織物の製作だけでなく、傘の組み立ても顔の見える環境で作成することができるようになります。
環境に配慮した持続可能なものを、顔の見える人から購入し、それを手入れをしながら長く使い続ける。
そういったライフスタイルを実現できる傘が本プロジェクトによって実現します。
さらに、郡内織、ほぐし織という衣擦れの美しさに定評のある織物の傘だからこそ、傘をさす時、しまう時に出るちょっとした音に耳を澄ませてみる。
自分の身の回りのちょっとしたことを大切にできる生活を送ってみませんか。
郡内織の新たな潮流をつくっていきたい
正直に申し上げると、私は都留市に来たばかりの頃、郡内織、ほぐし織というのは、流行に合わず、淘汰された産業なのだと思っていました。
海外の安い製品や流行に合ったデザインのものが出ている中で、時代に合わない商品は淘汰されて当たり前だと思いました。
もしかしたら、かつて産業として栄えていた時は人気があったため作れば売れるという意識で、あまり消費者のことを考えていなかったのかもしれません。
そして、ようやく消費者目線に立って物を考える必要が出た時には資金的にも人材的にも体力がなくなっていて、衰退するのを待つだけになったというのが実際のところかと思っています。
しかし、純粋にほぐし織、郡内織という商品に注目してみると、その魅力は絶大で、現代でも大いに人々を魅了するものだと感じています。
あとはしっかりと時代に合った製品を作れる人材の育成とその魅力を感じていただけるファンのみなさんに共感いただく場が必要だということで、クラウドファンディングを実施することにしました。
そんな想いに共感いただけるととてもうれしいです。
何卒、よろしくお願いいたします。
https://camp-fire.jp/projects/view/452634
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企業情報
| 企業名 | 一般社団法人まちのtoolbox |
|---|---|
| 代表者名 | 伊藤 洋平 |
| 業種 | その他サービス |









