開幕直前の「COP21 パリ会議」、その認知度は…!?高い意識と低い理解、地球温暖化対策の課題に迫る浮かび上がる期待と現実のギャップ

地球温暖化対策に関する新たな枠組みの合意を目指す国連の会議、COP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)が2015年11月30日(月)よりフランス・パリで開催されます。それに合わせて、生活者の意識・実態に関する調査を行うトレンド総研(東京都渋谷区、URL:http://www.trendsoken.com/)では、「COP21の認知度」や「地球温暖化対策の理解度」について調査を実施しました。

地球温暖化対策に関する新たな枠組みの合意を目指す国連の会議、COP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)が2015年11月30日(月)よりフランス・パリで開催されます。それに合わせて、生活者の意識・実態に関する調査を行うトレンド総研(東京都渋谷区、URL:http://www.trendsoken.com/)では、「COP21の認知度」や「地球温暖化対策の理解度」について調査を実施しました。

 

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[COP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)の注目のポイント]

 

先日2015年11月9日、国連の世界気象機関(WMO)より、「2014年、温室効果ガスの世界平均濃度が過去最高を更新した」と発表があったように、温暖化による地球規模のリスクは着実に高まっていることは間違いありません。しかし、2020年以降の地球温暖化対策に関する国際的な枠組みは決まっておらず、現在も各国で話し合いが続けられています。この現状における一つの課題が、先進国と発展途上国の間における意識の違いです。地球温暖化の一義的な責任を負う先進国と、貧困の救済のために発展の権利を有する途上国。両者の役割については、気候変動枠組条約でも明確に区分されているところですが、忍び寄る地球規模のリスクを回避するためには、その垣根を越えて互いに歩み寄ることが求められます。「程度の差はあれども、先進国と発展途上国が共通の責任を負う」というのが、1992年の地球サミットで採択された地球環境問題に対する原則です。

今年2015年6月に開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)では、「2050年までに世界の温室効果ガスを2010年比で40〜70%の幅の上方に削減する」という意欲的な目標が、先進国間の合意をもって掲げられました。こうした姿勢が発展途上国の譲歩をいかに引き出せるか注目されるところで、地球規模の温暖化リスクを回避するために、今回のCOP21において先進国と発展途上国の垣根を越えた国際的な合意が形成されることが期待されています。

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本レポートでは、はじめに、「社会問題に関心がある」という人500名を対象にしたアンケート調査を実施しました。地球規模の課題である温暖化対策におけるターニングポイントとなることが期待されるCOP21の認知度を明らかにします。併せて、地球温暖化対策への理解度や、求められる対策についても探りました。

また、NPO法人 国際環境経済研究所(http://ieei.or.jp)の主席研究員、竹内 純子氏に取材を依頼。地球温暖化対策に精通する竹内氏にCOP21の注目のポイントや、世界、および、日本の現状についてお話をうかがいました。

 

 

■1. COP21の認知率は僅か16%、浮かび上がる期待と現実のギャップ

 

はじめに、今回実施したアンケート調査「地球温暖化対策とCOP21に関する調査」の結果を紹介します。20代~50代の男女3,000名を対象に行った事前調査において「社会問題に関心がある」と回答した人の中から、無作為に抽出した500名を本調査の調査対象としました。

 

[調査概要]

調査名:地球温暖化対策とCOP21に関する調査

調査対象:事前調査において「社会問題に関心がある」と回答した20歳~59歳の男女500名

 ※事前調査は、3,000名を対象に実施。性別・年代別に均等割付。

 ※本調査の調査対象は、事前調査で「社会問題に関心がある」と回答した人から無作為抽出。

調査期間:2015年10月30日(金)~2015年11月5日(木)

調査方法:インターネット調査

調査実施機関:楽天リサーチ株式会社

 

◆ 社会問題の関心度が高い人でも、COP21の認知度は僅か16%… 求められる理解の促進

 

はじめに、COP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)の説明を行った上で、「今年2015年12月、フランスのパリにてCOP21が開催されることを知っていますか?」とたずねました。その結果、「知っている」と回答した人は僅かに16%。社会問題に関心がある人においても、COP21が開催されることを知らない人が8割以上を占めるということが分かりました。

また、「知っている」と回答した人を対象に、自由回答形式で「COP21について思うこと」を答えてもらったところ、COP21への期待を感じさせる回答が多かったのが印象的でした。代表的なところでは、「これから成人していく子どもたちの未来を守る対策を、世界共通の利益として打ち立てて欲しい。(千葉県・50歳女性)」、「地球温暖化対策に対して、世界各国で足並みを揃える良い機会になって欲しいと思う。(愛知県・36歳男性)」、「温室効果ガス削減の意識、目標の国際的な基準を作り、同じゴールに向けてスタートできることを願っている。(神奈川県・24歳女性)」といった回答があげられます。

地球温暖化対策は、経済にも大きく影響します。電気料金の値上がりなど、人々の日常生活に及ぼす影響も少なくありません。生活者の理解を得なければ、十分な対策を行うことは難しいでしょう。そうした観点で考えると、今回のCOP21の認知度は非常に低い結果でした。日本における温暖化対策を十分に推し進めるためにも、今後、COP21をはじめとする地球温暖化対策に関する話題をより多くの人に浸透させ、より深い理解を促すことが必要です。

 

◆ 日本政府が目指す“電源構成のベストミックス”… 寄せられる期待と、その実態とは!?

 

前段の通り、本調査では、COP21の認知度が非常に低いことが分かりました。しかし、地球温暖化対策への意欲が低いという訳ではないようです。「地球温暖化と温室効果ガスの排出量への関心」についてたずねると、「関心がある」と回答した人は72%と、7割以上を占めます。COP21の認知度の低さとは裏腹に、非常に高いスコアを誇ることが分かります。

それでは、地球温暖化対策を推し進めるためには、どうすれば良いのでしょうか。「2030年までに2013年比26%の温室効果ガスの排出量削減」という目標を掲げる日本政府は、温室効果ガスの排出量が多い火力発電の発電量を減らし、再生可能エネルギーや原子力発電による発電に切り替えていくことを目指しています。しかし、どんな発電方法もメリットとデメリットの両方を抱えており、その実現にはいくつもの課題があるのが現状です。

クリーンなイメージが強く、温室効果ガスの排出量削減に期待が寄せられる再生可能エネルギーも、その発電コストは火力発電の数倍です。経済的な負担を軽視することはできません。価格競争力が弱い再生可能エネルギーの導入を促すために、「固定価格買い取り制度(FIT)」という仕組みが導入されていますが、その負担を支払うのは生活者たちです。2015年度の負担額は、世帯当たり年間5,688円。1カ月に500円弱で、しかも、今後20年間は金額が増え続けていきます。

今回の調査では、「地球温暖化対策のために自身の家庭で負担できる1カ月当たりの費用」をたずねましたが、最多の回答は「101円~500円」(19%)。以下、「501円~1,000円」(18%)、「0円」(12%)と続きます。「自身の家庭では、1カ月に500円より多くの負担を行えない」という人も41%と、半数に迫ります。再生可能エネルギーの拡大に向けたハードルの高さがうかがえる結果と言えるでしょう。

一方、原子力発電については、安倍首相が「原子力を重要なベースロード電源として安全性を前提に活用していく」と説明しましたが、その安全性を問う声は依然大きいままです。しかし、安全基準や廃棄物処理に課題を抱える原子力発電も、“ゼロ・エミッション”と呼ばれるように、直接的な温室効果ガスの排出がないという長所があります。こうした各発電方法のメリット・デメリットを組み合わせることでできる最適な発電方法の組み合わせ“電源構成のベストミックス”の実現こそが、地球温暖化対策の大切な第一歩なのです。

しかし、社会問題に関心がある人たちにとっても、一つひとつの発電方法のメリット・デメリットについては十分な理解が伴っていないようです。例えば、「温室効果ガスの排出量が少ないと思う発電方法」として上位にあげられたのは、「太陽光発電」(61%)、「水力発電」(52%)、「地熱発電」(51%)。「原子力発電」については42%にとどまり、実態とはかけ離れた結果となったと言えるでしょう。

確かに、原子力発電の運用には課題もあります。しかし、安全性において適切に運用できるのであれば、温室効果ガスの抑制という点では非常に有用であることは間違いありません。こうした点が正しく理解されなければ、電源構成のベストミックスを実現することは難しいでしょう。温室効果ガスの削減目標もかないません。日本における温室効果ガスの削減を実現するためにも、地球温暖化対策に関する正しい理解を促す必要があります。そのためには、科学的根拠に基づいた、積極的、かつ、適正な情報発信が求められるのではないでしょうか。

 

 

■2. 国際環境経済研究所の主席研究員・竹内氏に聞く、COP21の注目ポイント

 

今回のアンケート調査では、COP21の認知の低さや、地球温暖化対策への理解の低さが明らかになりました。そこで、間もなく開幕するCOP21のポイントを知るために、NPO法人 国際環境経済研究所で理事・主席研究員を務める竹内 純子氏に取材を依頼しました。

 

◆ 地球温暖化対策のターニングポイントになれるか… COP21の注目のポイントを解説

Q. COP21について注目すべきポイントを教えて下さい。

 

そもそも、地球温暖化対策を難しくしているのは、地球規模のリスクを抱える地球全体の課題にもかかわらず、対策コストがそれぞれの国ごとに発生するという点です。温室効果ガスの排出量と経済成長との間には、密接な相関性があります。温室効果ガスの排出量を削減するということは、経済的なコストを支払うこととほとんど変わりません。つまり、世界中の国々が同様に抱える地球温暖化対策という問題に対して、その対策コストの負担量を交渉しているというのが現状です。先進国からの支援を期待できる途上国以外には、参加するメリットが見えづらい場であり、貿易交渉などとはその点で大きく異なると言えるでしょう。

今年で21回目を数えるCOP(国連気候変動枠組条約締約国会議)の主要な議題は、2020年以降の国際的な枠組みが合意に至るのか否かにあります。2020年以降の温室効果ガスの排出量を大きく左右する、地球温暖化国際交渉のターニングポイントとして、何らかの形では、国際的な合意(フランス・パリで開催されるため「パリ合意」と呼ばれています)に至ることが期待されていますが、地球温暖化対策として十分なものに至るには、決して容易な道のりとは言えません。

 

◆ COP21で合意が目指される“全ての国が参加する2020年以降の枠組み”、ポイントはルール作り

Q. 地球温暖化交渉のこれまでを教えて下さい。

 

「気候変動枠組条約」は1992年に採択されましたが、この条約は目的や基本原則などを定めるにとどまるものです。1997年に採択された京都議定書が、具体的な温室効果ガスの削減に関する、初めての取り決めとなりました。ただ、京都議定書の問題点としては、温暖化は先進国に責任があるとして、先進国だけが義務を負う仕組みだったという点があげられるでしょう。この時は、「どれくらい温室効果ガスの排出を減らせばいいか」、また、「そのための削減量を先進国の中でどう割り振るか」という議論をしたのです。

しかし、先進国の中でも最も温室効果ガスの排出量の多い米国が脱退してしまい、経済発展して排出量が増えた中国やインドも削減の義務を負いませんでした。そのため、地球温暖化対策としては意味の薄いものになってしまったと言えるでしょう。その時の反省を受けて、今回のCOP21では、2020年以降に全ての国が参加する枠組みへの合意が目指されています。

そのために、各国が自主的に目標を設定することが前提になりました。先進国と発展途上国では温暖化に対する責任の重さは違います。それぞれの国によって、温暖化対策にどう取り組めるかの状況も異なります。自主性を尊重したことで、初めて米国、EUに所属する各国といった先進国はもちろん、中国やインドなどの新興国を含めて全ての国が参加する枠組みができると期待されているのです。ただし、自主性を重んじると、「楽をしよう」とする国が出てしまう心配もあります。各国が出した目標を、互いにレビューするルール作りが必要です。

 

◆ 日本に求められる貢献

Q. 日本では、温室効果ガスの削減目標を達成できるのでしょうか?

 

日本は、「2030年に2013年と比べて26%削減する」という目標を掲げています。この目標を達成するためには、エネルギーの作り方をこれからどうしていくかが重要です。

日本では、福島の原子力発電所の事故以降、ほとんど全ての原子力発電所が停止し、現在、石油や石炭、天然ガスを燃やして電気を作る火力発電に発電量の9割を依存しています。再生可能エネルギーも急速に伸びていますが、風力や太陽光などの発電により賄えているのは、全体の2%程度です。そのため、震災前は約13億tだった温室効果ガスの排出量が、1億tも増えてしまっています。2030年には、再生可能エネルギーも原子力も約2割程度活用し、さらに、省エネを推進することで削減目標を達成することを考えていますが、課題は多いでしょう。

再生可能エネルギーの普及支援策である固定価格買い取り制度は費用対効果が悪いので、より経済効率の良いシステムが不可欠です。原子力発電については、安全性に関する議論が続き、世論や40年廃炉問題に揺れており、非常に不安定な事業環境にあります。発電量の安定性、安全保障やエネルギー価格を引き下げること、地球温暖化対策などにおいては、原子力発電の優位性は確かなものです。エネルギーの安定供給、経済性、環境保全というエネルギーの安全確保において重要な3E(※)の全てに強みを持つ原子力発電を、少なくとも今後数十年間程度は利用していかなければならないのであれば、国として、その事業環境をしっかりと整えていくことも必要でしょう。

 

※ 3E : エネルギー政策を考える上での基本的な3つの視点で、「エネルギーの安定供給(Energy security)」、「経済性(Economy efficiency)」、「環境保全(Environmental conservation)」の略称

 

Q. 自国で温室効果ガスの排出量を削減する以外に、日本が地球温暖化対策において貢献できることはありますか?

 

先ほど、各国が自主的な目標設定を前提とすることで、2020年以降の枠組みは多くの国の参加が可能になったとお話ししました。2015年11月11日時点で、159の国と地域が、自国における削減量の目標案を国連の事務局に提出しています。この自主的な目標設定とその後のレビューで地球温暖化対策に取り組んでいこうという考え方は、1990年代から日本政府が主張していたものです。この「プレッジ&レビュー」と言われる考え方に基礎を置く合意が今回のCOPでなされれば、日本政府の大きな貢献となります。

また、この仕組みにおいては、適切な取り組みを継続するように促すレビューの仕組みなど、どのように制度設計を行うかがカギとなります。日本の産業界では、長年、こうした取り組みがなされてきました。その過程で蓄積された日本の産業界の知見は、これからの制度設計にも活かすことができます。こうした貢献は、日本にしかできないものであると言えるでしょう。

さらに期待されるのは、技術における貢献です。経済成長との相関性が強い温室効果ガスの排出量を抑制するためには、両者を切り離すための技術開発を促すことが必要不可欠です。今年6月ドイツで開催されたサミットで、先進国首脳は2050年には40~70%の削減に向けて努力することで合意しました。これほどの大幅な削減は、革新的技術開発がなければできません。その一端を担うことが、日本には期待されています。日本の産業界が技術開発をリードできるように、政府が明確に方向性を示し、支援していくことが必要です。

 

◆竹内 純子(たけうち すみこ)

-NPO法人 国際環境経済研究所 理事・主席研究員-

 

21世紀政策研究所研究副主幹。産業構造審議会地球環境小委員会委員。

慶応義塾大学法学部法律学科卒業。1994年東京電力入社。2012年より現職。

水芭蕉で有名な国立公園「尾瀬」の自然保護に10年以上携わり、

農林水産省生物多様性戦略検討会委員や21世紀東通村環境デザイン検討委員などを歴任。

その後、地球温暖化の国際交渉や環境・エネルギー政策への提言活動などに関与し、

国連の気候変動枠組み条約交渉にも参加。自然保護からエネルギー問題まで、

環境問題や環境に関わる企業の取り組みをサポートする活動、提言を幅広く行なっている。

著書に「誤解だらけの電力問題」(ウェッジ出版)、「みんなの自然をみんなで守る20のヒント」 (山と渓谷社)など。

 

NPO法人 国際環境経済研究所 HP

URL:http://ieei.or.jp/

 

 

 



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