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「おもしろさ」と無垢に向き合う

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広報インタビュー
日本エイサ-株式会社
砂流 恵介 氏
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日本での「Acer」ブランド普及を担う砂流恵介さんは、博報堂ケトルの嶋浩一郎さんを師と仰ぎ、広告とPRの垣根を超えたコミュニケーションを展開。「おもしろさ」と無垢な気持ちで向き合う大切さを語る。

大事にするのは、広告とPRの連動、メッセージの一貫性


Qまずは、砂流さんの経歴を教えてください


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私は、新卒で秋葉原のPCショップ「ドスパラ」に入社しました。アルバイト時代から数えると、4年ほど販売員として働いていましたので、お客様にどういった言葉が響くのかといった顧客視点や、マザーボードやCPU、メモリといったPC関連の知識が身に付いたと思います。自身の体験をもとに、広告のメッセージを策定したり、メディアの方にお話しができるので、現在の業務にも生きていますね。

日本エイサーには、2007年に営業職として入社したのですが、メディアキャラバンとは知らずにメディアの方へ新製品を紹介して回ったり、変わった営業スタイルを取っていたら、3ヶ月後に現在のマーケティングコミュニケーション課へ異動になりました(笑)。

Q今はどのような業務をされているのですか?


私は、広報と宣伝を担当しています。業務で特に意識しているのは、「広告のクリエイティブ(グラフィックやコピーなど)をどうPRに生かすか」、「メッセージに一貫性はあるか」という点ですね。せっかく良いキャッチコピーを作ったのに、ネットで検索したら出てこないようでは勿体ないじゃないですか。

Qうまくいった事例を教えてください


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2011年11月に「ICONIA TAB(アイコニアタブ)A100」というタブレット端末を発売する際、「マンガ」と「Android」(アンドロイド)を掛け合わせた「マンガロイド」という名称で売り出しました。電子コミックの表示に最適な画面サイズの製品であることを伝え、端末にも手塚治虫さんのマンガをプリインストール。電子コミックの利用を前面に押し出した業界初のタブレットです。

おかげさまで多くのニュースサイトで取り上げていただき、記事の中で私たちが制作した広告のグラフィックが引用され、「マンガロイド」で検索すればそのニュース記事が多数ヒットする、という状況が生まれました。弊社はテレビCMを打つほどの予算はありませんので、限られた予算の中でバズる(ネット上で話題になる)工夫をしています。



師匠からの学びを実践する


Qどのようにアイデアを練ったのですか?


私は、博報堂ケトル代表の嶋浩一郎さんを尊敬していて、嶋さんのゼミに参加して学んだことを実践するようにしています。もともと、『ウェブはバカと暇人のもの』の著者・中川淳一郎さんを勝手に師匠と仰いでいて(笑)、実際に中川さんにお会いした際、ご自身の師匠が嶋さんだと仰っていたのがきっかけで嶋さんを知りました。今は中川さんが師匠、嶋さんが師匠の師匠だから大師匠という感じです(笑)。

お二人は広告とPRのどちらにも精通しているので、その視点が今の自分にとってすごく参考になります。ゼミへの参加は、かれこれ2年以上。ゼミの課題をこなしていくうちに、「教えてもらったことをやってみよう!」という気持ちになっていきました。

Qゼミで学んだことを、最初に実践したケースを教えてください


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2011年7月に発売された、タブレット端末「ICONIA TAB(アイコニアタブ) A500」でしょうか。社内で製品担当から情報をもらった時に、すぐ「この製品はいい!」とピンときました。2008~09年に、エイサーの知名度を上げたネットブック級の製品がきた!と。

そこで、まず博報堂とチームを組んで、弊社の製品担当を交えながら訴求方向を検討。この時に、広告のコピーとグラフィックについても同時に打ち合わせしました。次に、編集プロダクションと一緒に、どんなメッセージが響くのか、更に要素を洗い出し、ファクトシートに落とし込みました。

洗い出しが終わったら、その後は、PR会社の方とメディアキャラバンを実施。2週間で20媒体以上の方にお会いして、初めてタブレットを使用する方に最適な「入門機」と伝えて回りました。その甲斐あってか、記事では「入門機に最適」という紹介の仕方をしていただけました。『GIGAZINE』さんで広告のグラフィックをそのまま使っていただけたのも嬉しかったですね。

そして、製品発売と同時に広告展開をスタート。広告を見た方がネットで検索すると、多くのニュース記事がヒットする、という状況を作り出せました。



いいね!数2,500、1200以上ものツイート


Q外部との連携を成功させる秘訣は何でしょうか?


クリエイティブなコピーやグラフィックに規制をかけないことです。「これは無理」と変な制限をかけずに、おもしろいものをそのまま「おもしろい!」と受け取ったほうがいいと思いますね。2013年1月に、『ロケットニュース24』さんで紹介いただいた下記の記事が良い例だと思います。

※「8日間並んで買ったアップル福袋にガッカリしていたらAcerがMacBook Air似の最新ウルトラブックをくれたでござる」(ロケットニュース24)

Qどういった内容だったのですか?


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2012年末、翌2013年1月2日に発売される、アップルの福袋「ラッキーバッグ2013」を一番に手に入れた人は、MacBook Airがもらえる、という噂が広がりました。その噂を聞きつけた『ロケットニュース24』の記者の方が、発売の8日前(2012年12月25日)から渋谷のアップルストアに並んでいたんです。

記者の男性は1番に念願のラッキーバッグを手に入れたものの、福袋には狙っていたMacBook Airではなく、iPod nano が。その落胆した様子を同サイトの記事で知り、エイサーとしてできることはないかと考えました。

「もともとエイサーが好き」と公言されている記者の方だったこともあって、感謝の意を示したいと、「MacBook Airに見た目が似ている」と言われている(笑)、弊社の最新ウルトラブック「Aspire S7-191」を届けに行きました。すると、感激した記者の方が、画像入りの記事でその様子を紹介してくれたんです。

記事のいいね!数は2,500を超え、1200以上もツイートされました。これはメディアの方との協力関係の例ですが、自分の直感を信じて行動した結果、予想以上の反響が生まれたのは嬉しかったですね。



広告とPRの垣根を超えたい


Qみんなが喜ぶ、素晴らしい取り組みですね


記者の方がもともと欲しかったのは「Mac Book Air」だったんですが、うまくその話に乗った感じですね。といっても、今ではPCやタブレットの話をする際に、アップル抜きでものを語るのは難しいと思うんです。だったらその話に乗っかって、もっとおもしろくしていきたい。

タブレット自体、まだまだ国内で普及が伸び悩んでいるので、他社製品にダメ出しをするのではなく、業界全体が盛り上がるように仕掛けていきたいですね。

Q広報のやりがいをどんな時に感じますか?


広報は、社長の次に外で自社の話をする人。会社を背負って伝えるということは、それだけ責任も重い。売上に対する責任を持てない分、当事者意識を持って、会社を背負うという気概が大事です。そこにやりがいを感じています。

Q最後に、挑戦したいことを教えてください


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学生やベンチャー企業の広報の方に、勉強会のような場で自分の手口をさらけ出してしまっているので、新しい取り組みをどんどんしていかないといけません。今年ちょうど30歳でもあるので、挑戦に対して良い意味で腹をくくれた感じです。

2月14日のバレンタインデーに、チョコレート菓子「ブラックサンダー」の広告「一目で義理とわかるチョコ」が話題になりました。広告とPRの垣根が曖昧になっている中で、弊社も、こういった広告とPRどちらも兼ねた取り組みを意識していきたいと思います。そのために、エイサー単独で何とかするという発想ではなく、他社との提携やコラボも積極的に展開していきたいですね。
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