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エンタメコンテンツで、人生捨てたもんじゃないと思えた

エンタテインメントビジネスの専門家として、テレビやラジオでコメンテーターやパーソナリティーを務め、インターネット、新聞、雑誌でも幅広く活躍する『日経エンタテインメント!』編集委員の品田英雄氏に、ご自身のバックグラウンドについてお話を伺いました。

アイドル時代の幕開けにラジオ業界へ


Q大学卒業後に、ラジオ局で働いていますね。なぜラジオ局に?


とにかく音楽が好きだったんです。中学時代は全国大会常連のブラスバンド、高校の時はフォークソングのサークル、大学時代は軽音楽同好会。サークル内に山下達郎さんのバックもやっている難波弘之さんや『恋におちて』をヒットさせた小林明子さんがいて刺激を受けました。それで就職するならレコード会社かラジオ局に行きたいと思っていたのです。

大学のゼミでハワイのラナイ島でひと月過ごした体験も大きいですね。現地で見た高校生たちが、工作の授業中もラジオで音楽を聴きながら作業していたり、スーパーでもラジオを流しながら仕事をしていたりで、そのスタイルがとても格好良かった。就活ではいくつか内定をもらいましたが、一番音楽を流していたラジオ関東(現ラジオ日本)に入社しました。

 

Qラジオ局ではどんな仕事を?


品田 英雄1僕が入社したのは80年の4月1日。松田聖子が『裸足の季節』でデビューしたのと同じ日で、アイドル時代の幕開けの年でした。毎日のようにアイドルたちをゲストに迎えていました。『American Top 40』というアメリカのラジオ番組のADもやっていたので、海外アーティストのインタビューに行ったり、まだ日本に来る前のローリング・ストーンズのライブを見に、ロスに行ったりもしましたね。

1年経ったらディレクターを任されて、自分でネタを探して選曲して、ミキシングしたりテープをつなぎ合わせたりするようになりました。番組をいっぱい抱えていて、その夜の録音番組のテープを出すのを忘れて帰って、局が大騒ぎになったこともありました(苦笑)。
大学出たての、ほんとは仕事のことも分かっていない小僧が、華やかな舞台に踊り出た感じで得意になっていました。今考えると勘違いですが。遊ぶ時間なんかなくても毎日が楽しかったですね。

 

 

砂漠で人生について考えた(笑)


Q出版社に転職されたきっかけは?


85年にFMヨコハマが開局して、FM多局化時代が始まりました。ラジオの勢力図が変わり始めていました。そんなとき、85年の3月から7月まで、イスラエルの「キブツ」に農作業に行ったんです。イスラエルは世界中からボランティアと称して単純労働をする若者を受け入れていたんですね。日本でも大使館が募集していて、ラジオ局から送られることになったのです。
当時、キブツでは1日6時間、週6日働くと衣食住を保証してくれました。そこで朝5時半から昼過ぎまで連日3千個の卵を拾うという仕事をして、今まで自分がいたショービジネスの世界とは180度違う生活を経験しました。

 

Qその時に今後の人生について考えられたと?


そうですね。砂漠でたき火を見ながら(笑)。僕、大学時代に音楽とは別にもう一つ、一所懸命やっていたことがあって、それが社会学なんです。加藤秀俊先生という著名な社会学者の先生のゼミに入って、フィールドワークをいっぱいやっていました。ハワイのラナイ島では日系人の文化の伝承について調べたり、岩手の区界という林業の村、佐渡の宿根木という集落や東京の露天商など、人々の生活に密着してレポートしていたんです。

先生がインタビューしたいろんな人たちのライフヒストリーが入ったカセットテープを書き起こすというバイトもしていました。パソコンもなかった時代なので、必死に原稿用紙に向かっていました。だから、人の話を聞いてそれを文章にするというのは大学時代に経験していました。ラジオは毎日頑張っても、自分の作ったものが空気の中に消えていくので、自分で書いたものが残ることへの憧れみたいなものがありました。

 

Qそれで出版社へ?


加えて87年にマスコミの中途採用が大々的に始まったんです。今となっては中途採用なんて当たり前なんですけど、当時のマスコミは新卒しか採用していなくて。それが初めて86年の12月31日に、日本テレビが「中途採用します」というテレビスポットを流したのです。マスコミの中途採用が一気に広がったのも大きかったですね。

 

 

絶対に成功しないと言われていた『日経エンタテインメント!』


Qマスコミの中でもなぜ日経マグロウヒル(現日経BP社)へ?


87年は株価がどんどん上がっていました(笑)。経済を世界的に語れるって格好良かったし、数字に対して謙虚なところも好感を持ちました。まあ派手で見栄えが良いところで仕事することに憧れていたんでしょうけど(笑)。

 

Q月刊誌『日経エンタテインメント!』編集長を務められていかがでしたか?


品田 英雄2『日経エンタテインメント!』は、当初絶対に成功しないと散々言われていたんです。97年創刊なんですけど、95年にはインターネットが始まっていたので、世間的には「雑誌なんてもうなくなるでしょ」という風潮があり。そのうえターゲットが男性サラリーマンでした。男性は漫画とHな週刊誌しか買わないと言われていました。また、当時は専門指向が強まっていて、音楽雑誌でもヒップホップやパンクなど、それぞれ専門誌がでていて、そんな中で映画も音楽もテレビもゲームも詰め込んだクロスオーバー雑誌は流行らないと言われていました。それから、時代はビジュアルの時代なのに、文字を読ませようとしているなど…成功しない要因が有り過ぎたんです。

でも、創刊するとすぐに実売数で10万を超えて、みんなびっくり!創刊キャンペーンに米国のロックバンドKISSを起用したのも大きかった。周囲の評価が一気に変わりました。収支も2年間は赤字だったけど、広告業界にも応援してくれる人が増えて、部数・広告が伸びていき、黒字化しました。期待されていない雑誌(笑)『日経エンタテインメント!』を軌道に乗せたのは、人生振り返ってみてもすごいことやったなと思いますね。
ちなみにですが、「エンタテインメント」、「経済効果」、「ランキング」っていう言葉を大々的に打ち出して流行らせたのはうちなんですよ。

 

 

新しい世界に元気づけられた


Qところで、品田さんの書かれる記事は、ただ流行について書くだけでなく、その背景まで深く書かれていますよね。やはり社会学を学ばれたことが大きいのでしょうか?


僕の父は、日本で初めて海外で石油を掘った数人の中の一人でした。よくニュースに取り上げられていたし、NHKの『プロジェクトX』にも出ています。それで外の世界に興味を持つようになりました。また、父の仕事の関係で、小学生時代は3回転校しているんです。毎回違う文化をのぞくのですが、子どもって結構残酷で。今でいういじめみたいなこともあったりするんですよ。「わ≠「、こんなことも知らないのか」って。こっちはこっちで「俺はちがう世界も知ってるから、ここのルールが絶対じゃない!」と思うんだけど。狭い世界ではそれが絶対のルールになってしまうということを、すごくいっぱい体験しました。多様性だとかモノの見方は一つじゃないという考えは、子ども時代から培われてきたのも大きい気がしますね。
だから、表面の現象を追うだけでなく、歴史や文化、経済情勢と比較しながら考えるようになった気がします。

 

Q最後に、品田さんがコンテンツを通して伝えたいものって何でしょうか?


品田 英雄3僕、高校の終わりから大学の始めまで、社会に絶望して半分引きこもりのような暗い少年だったんです。世の中をどんどんネガティブに見るようになっていって。それが良い音楽だったり本だったり映画に出会って生きる希望を持ちました。学校もやめないで済んだ。オーバーに言うと、人生捨てたもんじゃないなと思えるようになったんです。
それから、ハワイにイスラエルにヨーロッパにと、新しい世界を見れば見るほど自分の視野の狭さに気づかされたり、元気づけられた。なので、これからの時代、僕が役に立てるとしたら、「今は自分の好きな事だけやっていてもそこそこ楽しい時代だけど、脇道にそれて新しいことに出会って経験や体験を積むと、人生もっと楽しくなるよ」と、伝えていくことだと思っています。

 

(取材年月:2014年5月8日)

品田 英雄氏

媒体名
日経エンタテインメント!
プロフィール
日経BPヒット総合研究所上席研究員/日経エンタテインメント!編集委員。1957年生まれ。80年学習院大学法学部卒業。ラジオ関東(現ラジオ日本)入社、音楽番組を担当。87年日経マグロウヒル(現日経BP社)入社。エンタテインメント業界向けの週刊誌『日経エンタテインメント』記者、開発室などを経て、97年一般読者向けのエンタテインメント月刊誌『日経エンタテインメント!』を創刊、編集長に就任。2003年同誌発行人に就任。2007年同誌編集委員に就任。2013年から日経BPヒット総合研究所上席研究員を兼任。エンタテインメントビジネス、流行、若者文化などを専門に、新聞、インターネット、ラジオ、テレビ、講演等に活躍の場を広げる。著書に『ヒットを読む』(日経文庫)、連載に日経MJ『ヒットの現象学』、日経ビジネスオンライン『こっちのヒット、あっちの流行』、日経電子版『ヒットのひみつ』など。

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